NHK大河ドラマ『おんな太閤記』第十八回「人質松壽丸」において、橋田壽賀子作品ならではだったことをあれこれと随想してみました。
第十八回「人質松壽丸」の概要
ねねは久しぶりに夫婦水入らずの正月を安土で過ごし、長浜へ戻ります。長浜では、羽柴家の嫡男に迎えた於次(おつぎ)丸、養女のお豪や姉の息子たち、そして、人質の松寿丸ら、子どもたちの声がにぎやかに響きます。ところが、別所長治、荒木村重が寝返り、秀吉は出陣します。黒田官兵衛は村重の説得から戻らず、秀吉は信長から官兵衛の嫡男・松寿丸を斬るように命じられますが、ねねの機転で松寿丸を隠してしまいます。
進之助は女子(おなご)だった!
本当は女子の進之助が男装して羽柴に仕官したのは、佐竹の「家名」を何とか守りたかった一心。
こうした異色のキャラクターを登場させたことで、戦国時代に独りの女子が背負った哀しい性を橋田先生が表現したかった様相にも。
そんな進之介に扮した当時の木原光知子さん。美男子過ぎましたね(笑)
進之介が女子だった件については、別記事でも詳しくご紹介しています。
雑炊と長台詞の処理で、ねねの口腔機能がやれやれでございます
この情景、演者の佐久間良子さんが本当に橋田先生の期待に応えていた印象(笑)まさに真骨頂でしたね。
おそらく観た感じ、雑炊を食べているふりだと思うのですが、実に美味しそうに食べる仕草でしたね。佐久間良子さんの面相表現が絶品でした。それに加えて、あの尋常でない長台詞でしたから(笑)
実際に消え物を食べていないにしても、食べる仕草と長台詞の処理で口腔機能をフル活用させた圧巻のパフォーマンス。佐久間良子さん、本当にやれやれでございます(笑)
ねねの口腔機能がやれやれだった件については、別記事でもご紹介しています。
森弥五六が竹中半兵衛より密命を承る
信長の命に逆らっても、松壽丸の命を救いたい、ねねの気持ちを確認したことで。
森弥五六が竹中半兵衛からの密命を、ねねに告白する。
御方様がその御所存ならばお話しいたします。秀吉殿の軍師、竹中半兵衛殿は松壽丸殿を殺してはならぬと。(森弥五六)
おし城中が秀吉殿の御指図のままになさる時には松壽丸殿を御隠し申せと、私がその任を承って嘉助殿と共に急使の役目を仰せつかってございます(弥五六)
もし露見の暁には、竹中半兵衛殿の御一存にてなされたことと責めを負われる覚悟にございます(弥五六)
弥五六の台詞から物語にやっと半兵衛の名前が登場したものの。松壽丸を隠す実行係は弥五六という流れ。
結局のところ、半兵衛の美談としてクローズアップしたくなかった橋田先生の考えが強く主張された様相にも。それ故に、半兵衛よりも弥五六を活躍させることで、結果的には、ねねの美談にしようとした狙いが見え隠れしています。
というわけで、半兵衛からの密命を承った弥五六については、別記事で詳しくご紹介しています。
竹中半兵衛の一存が、ねねの一存に取って代わる
弥五六から半兵衛の密命内容を聞いた、ねね。
竹中半兵衛殿のような御方じゃ、きっと何か思惑があってのことであろう。これで私も心強うなりました。(ねね)
もう、松壽丸を助ける気が満々となった、ねね。
密かに長浜を脱出させて尾張の寺に松壽丸を隠すことに。
大儀でした。今から城を出ます。弥五六殿はすぐに播磨へお戻りなさいませ。供は御義母様とこの者がいたします。(ねね)
しかし、女子(おなご)だけでは。わしゃ、そのために。(弥五六)
そなたがついていたらかえって目立ちます。それに、もしもの時に秀吉殿や半兵衛殿に御迷惑がかかりましょう。これはあくまで私の一存でしたこと。それでいいのです!(ねね)
ついには、半兵衛から密命を承っていた弥五六が、ねねの一存で罷免されて(笑)
このようにして、NHKおんな太閤記では、半兵衛の美談が、ねねの美談に取って代わる定め(笑)
橋田先生ったら、かなり強引だったかもね(笑)
というわけで、半兵衛の一存が、ねねの一存に取って代わった件については、別記事で詳しくご紹介しています。
次回に続く
週刊おんな太閤記随想、第十八回「人質松壽丸」
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