NHK大河ドラマ『おんな太閤記』第十回「小谷落城」における橋田壽賀子作品らしかった部分をあれこれと随想します。
第十回「小谷落城」の概要
NHKオンデマンドの場合
将軍・足利義昭は武田信玄らに書状を送り信長を討とうとしますが、信玄は病死してしまいます。信長は浅井・朝倉に総攻撃をかけると、秀吉は信長の命で小谷城を攻め、お市と3人の姫を無事に連れ帰りますが、浅井の嫡男・万福丸は小六に探し出されて殺されてしまいます。長政は自害して、ついに小谷城は陥落します。ねねは、家臣の小六が万福丸を殺したことで秀吉を責めますが、万福丸を助けたかった秀吉は肩を震わせて泣きます。
女子(おなご)が案じる話題を語りたがる
今、家康を攻められたら援軍を送ることもできぬ(利家)
それほどまでに信長様は、窮地に立たされておられますのか(まつ)
女子(おなご)の案じることではない(利家)
だったら、最初から女子(おなご)を案じさせるような話題を避けてくれ(笑)
橋田先生が妙に男尊女卑の情景を描写したかった様相にも。
目出度い時に秀吉が舞いたがる
本当によい元日でございます(ねね)
よし、一さし目出度く舞うかのう(秀吉)
あまりの徒然に 門に瓢箪吊るして 折節風が 吹い(秀吉の歌唱)
そういえば、きいと嘉助が祝言を挙げた時にも秀吉が舞を披露しましたね。
西田敏行さんの舞、ほんと美味ですね。
秀吉に御子ができたら大変なことを予見させる
この分では、秀吉殿に御子ができたら大変じゃ。さぞ子煩悩におなりじゃろう(まつ)
じゃが、いっそ子がない方が気が楽かもしれませんのう(秀吉)
子がなければ後ろ髪を引かれることもない(秀吉)
何だか、史実的伏線が出まくってるんですけど(笑)
恐ろしや、恐ろしや。
義昭の展開が早い
そして十一か月後、信玄は三方ヶ原で家康を打ち破り、三河へ攻め込んだ(語り)
今こそ逆臣、信長追討の兵を挙げる時よ!(義昭)
殿が京にて兵を挙げると仰せられますか(藤孝)
それはなりません!信長様は、上様を奉じて上洛し、足利幕府の再興に力を尽くされた御方。今もって将軍家を立て、臣従の礼を尽くされております。(藤孝)
何が臣従の礼じゃ!(義昭)
しかし、翌元亀四年の四月、信玄は病を得、雄図半ばにして没したのである。信長は窮地を脱した。まさに天運であった。信玄の死を知らず京で兵を挙げた義昭は、たちまち信長に敗れ、京から追放された。室町幕府はついに滅亡し、年号は天正と改まった。歴史は大きく変わったのである。(語り)
かろうじて、義昭挙兵に関する藤孝とのやりとりが挿し込まれたけど。
義昭に関しては、何だか語りで済まされてもおかしくない様相だったので。
もしかしたら、橋田先生が義昭のことを御気に召さなかった可能性が極めて高い(笑)
魅せる時間を与えてから止める
いよいよ命を絶つことを子供たちや近習たちに周知し始めた、お市の方。
しっかりと死ぬ間際に魅せてきますね。
隣には、くうの姿もしっかりと。
くうがやっと止めたよ(笑)懐刀をチラつかせた瞬間にすぐ止めろって感じ。
巻き添えにしてはもったいない
いやー、美しい御方じゃ。戦の巻き添えにしてはもったいないわ(嘉助)
巻き添えにしてはもったいないとか、お市本人の前でふつうは言えないよね。
嘉助が馬鹿というか(笑)敗戦国の大名夫人は何を言われても致し方ない罰ゲームの流れ。
初に秀吉が変顔を披露する
さあさあ、お初様。この秀吉の顔をとくとご覧くださりませ。これが本当の猿じゃ!(秀吉)
猿顔を売りにしている秀吉に。橋田先生が改めて猿顔を披露させた一幕(笑)
西田敏行さんの猿顔は面白かったけどね(笑)
あの顔見て笑うなというのも、当時の西尾まりさんにとっては酷だったかもね(笑)
幼い頃から茶々が気高い
触るな!汚らわしい!(茶々)
信長の前でも首(こうべ)を垂れなかった茶々。信長もたじたじでしたね。
NHKおしんの加代の前世は、とてつもないお嬢様気質を持ち合わせていたわけです。
万福丸を串刺しにして晒す
かなりショッキングの一幕でした。
このようになってしまった万福丸の面を描写しなかったところも橋田壽賀子作品らしいかも。
それにしても、背後の連中が笑っている情景が常軌を逸していたかも。だって、すぐ近くには串刺しの万福丸が晒されていたわけだよね。なのに、勝利に酔いしれて笑ってるって。ほんと、戦国時代は異常の世だったことを橋田先生が知らしめた様相にも。ある意味で、この情景で一番まともだったのは秀吉だったかもね。
魚の串焼き
万福丸の串刺しの情景の後に魚の串焼きって。
橋田先生、ブラックユーモアが過ぎましたね。
藤吉郎や小一郎がいたら喜ぶじゃろうに(とも)
喜ぶ道理がないだろ(笑)
ねねが初めて秀吉からビンタを御見舞いされる
NHKおしん然り。渡鬼に比して、ビンタシーンがあまり面白くない。
渡鬼の場合、おそらくエンタメを意識してくれてるので面白いんだよね。映し方がしっかりしてるから。
ねねの乱れた髪が西洋風味
戦国時代の御婦人がロン毛を乱す情景って、なかなか珍しいかも。
特に、佐久間良子さんの場合、乱れたロン毛が西洋風味を醸し出していたのが特徴的。
次回に続く
週刊おんな太閤記随想、第十回「小谷落城」
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