NHK大河ドラマ『おんな太閤記』第二十回「秀長の祝言」において、橋田壽賀子作品ならではだったことをあれこれと随想してみました。
第二十回「秀長の祝言」の概要
秀吉は三木城を攻略して長浜に凱旋し、堺の豪商などを招いて茶会を催します。さらに、ねねは一族や家臣に別席を設けていました。それは、ねねとなかで考えた、秀長としのの祝言の席です。しのは三木城の兵糧攻めで失明していました。秀吉はしのの嫁入りを許さないと激怒しますが、ねねとなかに脅され言いくるめられて、2人の結婚を認めます。その後、秀吉は鳥取城を落とし、天正10年(1582)、備中高松城を水攻めにします。
ねねとなかの嫁姑プロデュース「しのと秀長のサプライズ祝言」
もちろん、しのと秀長の祝言を大きくクローズアップすること自体、橋田壽賀子作品ならではなんですけど。
しのと秀長の祝言に反対する秀吉をサプライズ祝言で封じ込めたりとか(笑)
ねねの手法って、とにかく既成事実を先にこしらえてしまえばこっちのもの的な。
まさに秀吉にとっては、アウェー会場でしたね(笑)
じゃがのう、ともとあさひの心情に関しては、いまいち情景から読み取れませんでした。特に、あさひに関しては、遠目で見てると浮かない面相表現に見えたので。
しのと秀長のサプライズ祝言については、別記事にて詳しくご紹介しています。
鳥取城の渇え殺しで秀吉方の頭脳戦略をアピール
これね、如何にも秀吉方が頭脳戦でしてやったとぞ的な描写になっていたかも。
のう、お姉様は長浜の町の噂を御存じか?秀吉殿は長浜の舟持ちに諸役を免じなされたというが、若狭に舟を持っている長浜の商人たちは、因幡へ下って因幡の五穀類をどんどんと買い入れておるそうじゃ。そのために、因幡にはもう穀類が無うなってしもうたとか。それがのう、秀吉殿の差し金じゃそうな。秀吉殿は鳥取城攻めに備えて城に兵糧を持ち込ませぬように、因幡中の穀類を買い占めにかかったのじゃと。長浜の舟持ちに諸役を免じられたのもそのためであったと。まことか?秀吉殿のなされよう、御姉様は御存じだったのか?秀吉殿は三木城攻めと同じように、鳥取城も渇(かつ)え殺しになさろうとの御所存で。そうなのか?(やや)
ややが説明的の長台詞を披露しつつ、なんだかんだ言って質問する形とか(笑)
ややの台詞、一気に語り手が説明してもよかったような内容だけど。
ややに質問させる形を採用したことで、ねねの心痛を橋田先生が描写したかった感じでしょうか。
さらに、鳥取城を取り囲んでいる秀吉の陣中にて、小六と浅野長政が、してやったりモードで、渇え殺しの追加説明(笑)
秀吉殿の深謀遠慮、見事図に当たったわ!(笑)因幡の穀倉は皆空っぽじゃ(笑)金に目がくらみおってからに。皆、長浜の商人どもに売り渡してしもうたらしいわい(笑、小六)
鳥取城の前の城代は、殿の謀略とも知らず目先の利に引かれて三年!三年分の蓄えを皆銭に換えてしまったということでございます。吉川経家などは毛利よりの援軍として鳥取城に入った時には穀倉は空。そのかわり、銭はいくらあっても腹は膨らまぬ(笑)籠城するとなったら石くれ同然です。(浅野長政)
ややと長政の台詞が対照的だったのも、さりげなく印象的。
兎に角、鳥取城の毛利方、本当にお気の毒でした。
おふくが秀吉の側室になるのを、ねねの悋気が阻む
ねねの悋気(りんき)が再発した一幕です。
秀吉の側室になることを承服した、おふくがお辛いだろうとか、ねねがいろいろと言っていましたが。おふくが秀吉の側室になったら、ねねの方がお辛くなりそうなのは目に見えて明らか(笑)
だって橋田先生が描写したい、ねねの本音はこれだから(笑)
誰にも触らせとうございませぬ。ねねだけの秀吉じゃ。(ねね)
故に、尼になることを、おふくに提案したあたり、ねねが差し出がまし過ぎて(笑)
個人的には、かなり美味の一幕でした。
あと、橋田先生が「二夫に見ゆるは女子の恥」とか「女子の操」とか、おふくに綺麗事を言わせていたのが、かなり気になったポイント。だって、おふくの初婚相手は宇喜多直家ではないと思っていたので。
この点を含めて、おふくの一幕については別記事で詳しくご紹介しています。
次回に続く
週刊おんな太閤記随想、第二十回「秀長の祝言」