NHK大河ドラマ『おんな太閤記』第十八回「人質松壽丸」の登場人物と演者の情景について、あれこれと随想したいと思います。
第十八回「人質松壽丸」の概要
ねねは久しぶりに夫婦水入らずの正月を安土で過ごし、長浜へ戻ります。長浜では、羽柴家の嫡男に迎えた於次(おつぎ)丸、養女のお豪や姉の息子たち、そして、人質の松寿丸ら、子どもたちの声がにぎやかに響きます。ところが、別所長治、荒木村重が寝返り、秀吉は出陣します。黒田官兵衛は村重の説得から戻らず、秀吉は信長から官兵衛の嫡男・松寿丸を斬るように命じられますが、ねねの機転で松寿丸を隠してしまいます。
クレジットタイトルツイート
NHK #おんな太閤記 第十八回「人質松壽丸」
作:橋田壽賀子
音楽:坂田晃一
(中略)出演
1佐久間良子 2中村雅俊 3尾藤イサオ 4せんだみつお
連名G
中G:1藤岡弘 2長山藍子 3津島恵子
連名G
トメG:1赤木春恵 2泉ピン子 3前田吟 4西田敏行
(後略)#おんな太閤記クレジット タイトル pic.twitter.com/Qi8gPH6VWF— 渡る世間の片隅で (@watasumi_net) July 30, 2022
ねね:佐久間良子さん
ねねに扮した佐久間良子さんの活躍が顕著だった故に、別記事で気になったことをご紹介しています。
秀長:中村雅俊さん
台詞のない情景参加がいくつかあったのみで、あまり活躍しなかった回。
そんな中、荒木村重に会いに行くと言い出した黒田官兵衛を心配する台詞がありました。
しかし、ここまで来て翻意なされる道理がないわ。官兵衛殿にもしものことでもあたら。相手はもはや敵じゃ。(秀長)
橋田先生が史実的伏線を示す駒として秀長を利用した次第。
浅野長政:尾藤イサオさん
浅野長政に関しても、台詞のない情景参加がいくつかあったのみ。
嘉助:せんだみつおさん
今回はクレジットタイトルで初の四枚目ということもあってか。嘉助の活躍が著しかった様相。
まずは、茶会にお呼ばれしなかった嘉助が茶会メンバーに謀反速報。
御免!安土より急使にて荒木村重、謀反の由にございます!(嘉助)
嘉助の台詞が物語を展開させることに。
さらには、信長から松壽丸を斬るように命じられた秀吉の急使として弥五六と共に、ねねの前に姿を現した嘉助。
嘉助さが戻ったそうな!あっ、嘉助さ!(きい)
大事な御役目じゃ。下がっていろ。(嘉助)
義姉様、どうかなされたか?(きい)
きい!下がれと言うに!(嘉助)
きいに空気を読むように指示した様相の嘉助。いつもと何かが違う。
秀吉殿とてお辛いのじゃ。上様の御気性を御存じ故、仕方なく。(嘉助)
秀吉への気遣いも表現されました。
おし城中が秀吉殿の御指図のままになさる時には松壽丸殿を御隠し申せと、私がその任を承って嘉助殿と共に急使の役目を仰せつかってございます(弥五六)
おぬし!(嘉助)
これって、嘉助は密命を受けなかった様相。秀吉の身内だから半兵衛に警戒されたのかな。
嘉助に扮した、せんだみつおさん。これまでは、弱弱しい、コミカルのパフォーマンスが売りの様相でしたが。今回みたいな神妙な面持ちの嘉助、いい味醸し出していましたね。
みつ:東てる美さん
突然、秀吉が長浜に戻ってきた理由が不明にて困惑していた、ねねから情報提供を求められて。
やはり安土で何か(みつ)
播磨では三木城をはじめ、別所長治の支城が各所で兵を挙げ、上月城は毛利勢にかこまれております。それで上様に援軍をお願いに上がられたのでは。(みつ)
そのような時に、まさか長浜へお戻りになるとは、みつは思うてもおりませなんだ。どういう御了見で。(みつ)
この後、雑炊をこしらえた、ねねが不貞腐れた秀吉と対峙することに。
おみつのナイスアシストでしたね。
進之介:木原光知子さん
今回、進之介の正体が明らかになりました。
別記事にて詳しくご紹介しています。
杉原家次:戸浦六宏さん
乱世の習いに従おうとした杉原家次。松壽丸の命を助けたい、ねねとは意見の衝突が必然となりました。
別記事にて詳しくご紹介しています。
森弥五六:ガッツ石松さん
黒田官兵衛が裏切ったと判断した信長の命にて。松壽丸を斬るように命じられた秀吉の急使として、嘉助と共に、ねねの前に姿を現した森弥五六。
実は竹中半兵衛から密命を受けていました。
別記事にて詳しくご紹介しています。
信長:藤岡弘(現・藤岡弘、)さん
上月城救援目的で秀吉から援軍を請われた信長の言い分は。
西国計略は筑前に任せてある。援軍などもっての外じゃ!(信長)
まず、別所長治を討て。三木城を落とせば、毛利は播磨から手を引こう。全軍を挙げて三木城攻略に当たるのじゃ。(信長)
見捨てい!三木城攻略が先じゃ(信長)
大の虫を生かすためには、小の虫を殺さねばならぬ時もあるわ。上月城などにかかずらわっていては、三木城の落ちる道理はあるまい。即刻、上月城から兵を引き、三木城攻略に全力を挙げい!(信長)
兎に角、三木城攻略が最優先で上月城は見捨てろと。
上月城を見捨てたら、調略で秀吉方の味方になってくれた武将たちが謀反を起こす危険性も。すなわち、今までの苦労が水の泡となる可能性が高いわけです。確かに、秀吉の苦衷は計り知れないかも。
そして今度は、謀反の荒木村重を説得に行った黒田官兵衛が戻らないことを知ると。
即刻、筑前に官兵衛が差し出した人質を斬るように申しつけい(信長)
他の者への見せしめじゃ!斬らねば見せしめにはならぬわ!斬れ(信長)
兎に角、乱世の習いを強調して止まなかった信長。
信長が見せしめを重んじたことで、配下の疑心暗鬼を煽った可能性も。
とも:長山藍子さん
信長の四男・於次丸を秀吉の世継ぎとして迎え入れたことに対して。複雑の胸中を面相で醸し出していた、とも。
ともについては、小姑問題(笑)として、別記事で詳しくご紹介しています。
なか:赤木春恵さん
松壽丸を尾張の寺に隠すため、進之介と共に、密かに長浜城を出ることになった、なか。
御義母様、申し訳ございません(ねね)
なんのなんの。儂は中村へ去ぬることができるのじゃ。有難いと思うておる。それに、この婆(ばば)とて役に立つことがあると思えば心も勇み立つわ。(なか)
道中、御無事で(ねね)
ああ、行ってくるわ。さあ。(なか)
松壽丸の件に便乗して、なかが尾張の中村に去ぬることにも。やっと念願が叶いましたね。
常念(じょうねん)よ。よう精が出るのう。御婆(おばば)も畑が忙しゅうてのう。のう、辛いことがあったら何でもこの御婆に言うのじゃ。儂はいつでも中村におるでなも。あっ、これは餅じゃ。のう、寺の食い物だけではひもじかろう。(なか)
そして、松壽丸の偽名が「常念」であることを明らかにしました。
きい:泉ピン子さん
ねねが松壽丸を見殺しにしたと思い込んだ、きい。
きいに関しては、小姑問題(笑)として、別記事でご紹介しています。
小六:前田吟さん
今回、小六が目立った情景は二つ。
まずは上月城を救援できなかった秀吉に対して。
儂が殺したのよ。儂がふがいないばかりにのう。(泣、秀吉)
弔い合戦じゃ!何が何でも三木城を落とさねばならん!長治の首をあげてこそ、尼子、山中御両人への詫びじゃ。さあ、しっかりなされい!(小六)
彼らは尼子の再興を目指していたので。三木城を攻略したところで彼らの弔いにはならない。
その後、秀吉が開いた初の茶会に出席。
講釈はもうええわ。茶飲むなら茶飲むで早くしてくれんかな。(小六)
いやいや、儂は御免じゃ。茶の湯など知らいでも戦はできるわい。(小六)
(笑)筑前殿がこのような(笑、小六)
主君の秀吉を指さしたりして(笑)橋田先生が何かと秀吉を滑稽に表現するための駒として小六を活用した様相。
あーやれやれ。茶の湯とは面倒なものよのう。戦をしとる方が楽じゃ。のう、又十郎、ええ?(小六)
小六は人殺しが楽だと。本当に異常の時代だったみたいですね。
秀吉:西田敏行さん
どちらかと言えば、今回は他の登場人物の引き立て役と化していた様相にも。
特に、秀吉で印象的だったのは、ねねからお灸を据えられた一幕でしょうか。何だかお灸が腰に乗った緊張感なのか、それとも劇中ながらお灸が気持ちよかったのか。そういった混ざり合った感情がカメラ目線に反映された様相にも(笑)
次回に続く
週刊おんな太閤記随想、第十八回「人質松壽丸」
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