NHK大河ドラマ『おんな太閤記』第十六回「秀吉蟄居」の登場人物と演者の情景について、あれこれと随想したいと思います。
第十六回「秀吉蟄居」の概要
秀吉は、信長の命で上杉謙信と戦う柴田勝家を援護するため越前に出兵しますが、勝家と衝突して信長の許しもなく兵を引き上げて長浜に戻ってしまいます。秀吉がなぜ信長の命に背いたのか、ねねには分かりませんでした。信長は秀吉を打ち首にすると激怒しますが、ちっ居処分で済みます。すると、秀吉は毎晩酒宴を開き、信長の側近に付け届けをして金を使い果たします。それは、信長に盾つく気などないと証明するためでした。
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NHK大河ドラマ『#おんな太閤記』第十六回「秀吉蟄居」
作:橋田壽賀子
音楽:坂田晃一
(中略)出演
1佐久間良子 2中村雅俊 3浅茅陽子 4尾藤イサオ 5津島恵子
連名G
中G:1藤岡弘 2長山藍子
連名G
トメG:1赤木春恵 2泉ピン子 3前田吟 4西田敏行
(後略)#おんな太閤記クレジット タイトル pic.twitter.com/eVyUrNIIdK— 渡る世間の片隅で (@watasumi_net) July 16, 2022
ねね:佐久間良子さん
御前様!御好きなだけ銭を御使いなさいませ。こういう時にこそ、下の者に振る舞うのが後々励みになりましょう。銭を惜しまず、私も馳走などを手配いたします。(ねね)
この情景の、ねねの手振りが往年のやすし師匠っぽくて(笑)
あと、これまではあまり印象になかった、ねねの目ん玉がない微笑とかね。
あと、忘れちゃいけないのが、ややへのビンタ。ついに出ましたね。これまでは、ややに憎まれ口をたたかれて、言い返すことはあったけど。ビンタに関しては封印してきましたからね。
というわけで、ややに御見舞いしたビンタの情景については別記事でご紹介します。
秀長:中村雅俊さん
御静まり召されい!謀反などと穏やかでないことを口にされては、秀吉殿が迷惑されるだけじゃ!(秀長)
しかし!(小六)
全て、秀吉殿の御裁量に御任せすればよい。秀吉殿がお決めになることじゃ。(秀長)
血気盛んの小六を制したりと、ナンバー2としての役割を遺憾なく発揮した秀長。
そして、物語のクライマックスでは千宗易に会いに堺までひとっ飛び。中村雅俊さんの華麗な手綱さばきが観られると思いきや。
昭和の大河ドラマ名物、乗馬のテイ(笑)兎に角、上下に弾みます。
西田敏行さんに比して、中村雅俊さんには馬術の心得があまりなかったようです。
やや:浅茅陽子さん
やはり、ややに関しては、ねねに初めて横っ面を引っ叩かれたビンタの一幕に尽きます。
別記事でご紹介しています。
浅野長政:尾藤イサオさん
信長様に謀反なされるというのか?(浅野長政)
当たり前じゃ!信長連れにむざむざと秀吉殿を殺されてたまるか!いざという時は、この俺が信長の首を討ちとってやる!(小六)
兎に角、小六に関しては血気盛ん過ぎるので。相反するキャラとしての浅野長政がさりげなく表現されていた回。
そして、ねねやや姉妹のビンタ場面に関しては、さりげなく双方をアシストした活躍ぶり(笑)
ほんと、長政が妙にさりげなくて(笑)
ビンタ場面については別記事でご紹介しています。
こほ:津島恵子さん
何より目出度い御出陣、祝着至極に存じまする(こほ)
信長の勘気が解けたということで。松永久秀・久通親子を討伐するために出陣することになった秀吉に対して御祝いの言葉を述べた、こほ。
じゃがのう、こほが面白かったのはこれかな。
御湯殿の支度ができております(こほ)
分かっておるわ!呼ぶまで声をかけるな!(秀吉)
せっかく生きて帰ってこれたんだから。ねねと夫婦そろって御湯殿でいちゃついてもよかったかもね(笑)
嘉助:せんだみつおさん
ねねにビンタを御見舞いされた、ややが場を外した直後の一幕にて。
酒じゃ酒じゃ!のう!酒が一番じゃ!久しぶりに休みじゃ!皆が揃うたんじゃ、楽しくやろうではないか(笑)ひとつ賑やかには!(笑、嘉助)
こういう時は率先して「せんだみつおゲーム」やらなきゃね(笑)
みつ:東てる美さん
みつにございます。みつにございます!(みつ)
松永久秀、久通親子が謀反にございます(みつ)
突如、摂津天王寺の砦を去り、大和信貴山城(しぎさんじょう)に立て籠もりましてございます(みつ)
まずは松永久秀、久通親子の謀反を秀吉に知らせる。
八月十四日、能登七尾城が上杉謙信の手に落ちましてございます(みつ)
七尾城攻めの前夜、謙信は城外の陣中にて、仲秋十三夜の月をめで、能登一国を手中に収める胸中をこの歌に託した由にございます。(みつ)
敢えて、橋田先生が謙信公が詠んだ漢詩を挿し込んできた一幕ね。この漢詩、おみつはどうやって入手したんだろうね(笑)加えて、漢詩を詠んで悟る力が秀吉に備わっていたとは(笑)
兎に角、橋田先生が多かれ少なかれ強引の様相を呈したかも(笑)
間もなく北国は雪になります。恐らく、明春の雪解けを待って越前を侵すやに思われます。(みつ)
大和信貴山城の松永久秀といまだ苦戦中にございます(みつ)
播磨の別所長治にも不穏な動きが(みつ)
このまま放っておいては、播磨での秀吉様の御苦労が水の泡になりましょう(みつ)
今回もやはり、クールビューティーの様相を呈して止まなかった、みつ(笑)色んな意味で侮れませんね。
杉原家次:戸浦六宏さん
当たり前じゃ!信長連れにむざむざと秀吉殿を殺されてたまるか!いざという時は、この俺が信長の首を討ちとってやる!(小六)
そうじゃ!我ら一万の兵をもって当たれば、信長ごとき物の数ではないわ!(浅はかの武将)
そうじゃそうじゃ!信長、討つべし!(他の浅はかの武将たち)
などと、血気盛んの小六たちに比して、落ち着いて着座したままだった家次とかね。こうした描写とかも、家次の人間性が分かりやすいかも。
流石のねねもびっくりした。もっと驚いたのは、羽柴家の財政を預かる家次である。(語り)
儂から秀吉殿に申し上げても「馬の耳に念仏」じゃ。少し、ねね殿から御諫め申し上げてくだされ。あれではまるで、銭をどぶへ捨てるようなものじゃ。(家次)
秀吉の意図を知らない家次という駒に関して、橋田先生が重宝してますね。っていうか、小六が気づかないのは致し方ないとしても(笑)家次だったら秀吉の策に気づいても不思議はないかも。
こう、方々で戦では信長様も御側近の方々も大変なことじゃろう。見舞いじゃ。ありったけの銭をばらまいてくれぬか。(秀吉)
ええっ!(家次)
あからさまに主君の命に拒否反応(笑)
ほんと、素敵の困り顔を醸し出して止まなかった戸浦六宏さんです(笑)
秀吉殿が御蟄居の間の御散財。中国攻めの軍資金など、あろう道理がござらぬわ。こういうこともあろうかと、儂も御諫め申したのじゃ。(家次)
武器も調達せねばならん。人も養わねばなりませぬ。その他諸々、どれほどのものが要ると御思いになります。そのような莫大なものをどこで。(家次)
秀長、堺へ立て(秀吉)
はっ?(秀長)
家次が常識的に当たり前のようなことを説明すればするほど、千宗易を頼るという秀吉の発想が際立つ流れね。
繰り返しになりますが、橋田先生にとって、家次は本当に駒として使い勝手がよさそう(笑)
武井夕庵:多田幸男(別名・多田幸雄)さん
別記事で特集してみました。
信長:藤岡弘(現・藤岡弘、)さん
冒頭から秀吉に対して激高の様相を呈していたものの。側近・武井夕庵の働きもあってか、最後は秀吉との良好な主従関係を復活させた信長。
途中、吊るしてあった灯篭を秀吉の代わりに斬り落とした時の藤岡弘さん。面相が何ともいい味醸し出していましたね(笑)
それとやっぱり気になったのは、久しぶりの弓術。この一幕、是非とも制汗剤のCMで使ってほしかったですね。だって、さりげなく脇の下アピールが凄いんだもん(笑)
信長と武井夕庵の絡みとかについては別記事でご紹介しています。
とも:長山藍子さん
もしものことがあったら、あの子たちはどうなるのじゃ。豪姫や松壽丸は帰るところがおありになるが、あの子たちは。(とも)
田舎へ帰って百姓をやればええことよ。どうせ儂は、侍には向いておらぬ。(弥助)
情けないことを。せっかくここまで来て。孫七郎や小吉(こきち)は藤吉郎に負けぬ武将にと思うていたのに、不憫すぎるわ。(とも)
弥助に対して焦(じ)れた感じで噛みついた、ともが久しぶりで(笑)侍になる前も、侍になったあった後も。この夫婦は根本的には何も変わっていないとでも言いますか。
我らはそなたのことを案じて(とも)
このような時に酒を飲んで大騒ぎをするというのか(とも)
蟄居中の弟・秀吉を案じた、ともだったけど。
妹のきいと二人並んで座っていると、やっぱり強烈度が高くなりますね(笑)
なか:赤木春恵さん
(笑)よう眠っておるわ。あれだけ寝ておれば案ずることはにゃあで。(なか)
秀吉殿は眠っておられませぬ。周りの者にとやかく言われるのが煩わしゅうて何も召し上がらずに、ただ寝たふりをなすってらっしゃるだけでございます。(ねね)
さすが、おかかじゃ。ねねさも見抜いておったか。(なか)
御義母様も?(ねね)
(笑)殊に女子(おなご)はうるさいでのう(なか)
ねねと一緒に秀吉の様子を覗き見した時の一幕。兎に角、赤木春恵さんの目ん玉が印象的でした(笑)
これって、秀吉が寝ているものと、なかがねねに信じ込ませたかったけど。実は、ねねも秀吉が寝ていないことに気づいていたと。何だかハイレベルのコミュニケーションだった様相にも(笑)
はあ、中村を捨ていでよかった。のう、ねねさ、中村へ去(い)のう。皆一緒に去のう。畑さえ耕しておれば、人らしい生き方ができるぞなも。(なか)
百姓は百姓に戻るのが一番じゃ(なか)
また戦か。今度はひょっとしてみんなで中村へ戻れるかと思うておったのにのう。(なか)
結局のところ、中村に去ぬりたい気持ちでいっぱいだった、なか(笑)
これでまた、ねねさの苦労が続くのじゃ(なか)
なかを通して橋田先生が分かりやすい伏線を示しました。
きい:泉ピン子さん
相変わらず呑気(のんき)者よのう。明日をも知れぬというのに。(きい)
何が休みじゃ。人の気も知らで。兄さのおかげでみんな、生きた心地はせぬわ。(きい)
兄さ!(きい)
秀吉にストレートに文句を言ってこそ、きい。
ともと二人並ぶと色んな意味でパワー倍増といった印象でした。
小六:前田吟さん
第十六回「秀吉蟄居」は小六回でもありましたね。
というわけで、別記事でご紹介しない法はない。
秀吉:西田敏行さん
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演者の西田敏行さんの魅せ場がてんこ盛りだった第十六回「秀吉蟄居」。
安土城へ出立するため、あってもなくてもよかったような上半分の裸身を披露したり(笑)
安土城に到着後、信長の側近たちに囲まれて危機一髪だった秀吉の形相にも見応えがありました。
とりあえず、信長から蟄居を言い渡されて、長浜城に帰還する際に披露した馬術の腕前。乗馬に関しては流石の一言です。昭和俳優の嗜みとして、きっと時間のある時には乗馬のお稽古をなさっていたんでしょうね。
そして、極めつけは、上杉謙信公がこしらえた漢詩をなんと読解!
ただの文(ふみ)ではありません、漢詩です!
百姓出身の秀吉が手紙を読んだり書いたりすることだって並大抵のことではなく、かなりの努力が要求されたと思います。じゃがのう、漢詩はもっとハードルが高いでしょ。ちなみに、橋田先生が漢詩を読解したとしても「先生だったら読解する力があっても不思議ではない」と思ったりします。じゃがのう、秀吉の場合はどうなんでしょうね。
この点については別記事でもご紹介しています。
次回に続く
週刊おんな太閤記随想、第十六回「秀吉蟄居」
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