NHK大河ドラマ『おんな太閤記』第十回「小谷落城」の登場人物と演者の情景について、あれこれと随想したいと思います。
第十回「小谷落城」の概要
NHKオンデマンドの場合
将軍・足利義昭は武田信玄らに書状を送り信長を討とうとしますが、信玄は病死してしまいます。信長は浅井・朝倉に総攻撃をかけると、秀吉は信長の命で小谷城を攻め、お市と3人の姫を無事に連れ帰りますが、浅井の嫡男・万福丸は小六に探し出されて殺されてしまいます。長政は自害して、ついに小谷城は陥落します。ねねは、家臣の小六が万福丸を殺したことで秀吉を責めますが、万福丸を助けたかった秀吉は肩を震わせて泣きます。
クレジットタイトル
NHK『#おんな太閤記』第十回「小谷落城」クレジットタイトル
作:橋田壽賀子
音楽:坂田晃一
(中略)出演
1佐久間良子 2中村雅俊 3浅茅陽子 4音無美紀子
連名G
中G:1藤岡弘 2夏目雅子 3長山藍子
連名G
トメG:1滝田栄 2前田吟 3尾藤イサオ 4西田敏行
(後略)#おんな太閤記クレジット pic.twitter.com/QwEtKrgmBl— 渡る世間の片隅で (@watasumi_net) June 4, 2022
NHK大河ドラマ『#おんな太閤記』第十回「小谷落城」クレジットタイトル、連名G
東てる美 せんだみつお
風間杜夫 近藤洋介
宗近晴見 菅原ちね子
角野卓造 津村隆ガッツ石松 河原裕昌
新井みよ子 岡玲子
志喜屋文 西尾麻里 清水愛
(後略)#おんな太閤記クレジット— 渡る世間の片隅で (@watasumi_net) June 4, 2022
ねね:佐久間良子さん
まだ頑是無い御子だった万福丸を串刺しにして晒した秀吉に噛みついたことで。秀吉から初めてビンタを御見舞いされた、ねね。乱れ髪が西洋風味を醸し出した一幕でしたね。しっかりとカメラ目線できめの面相を醸し出した当時の佐久間良子さん。
戦国時代の御婦人がストレートのロン毛を乱す情景って。ほとんど記憶にないので。結構、斬新の一幕だったかも。
乱れていたロン毛を瞬時にしっかりと整えて(笑)
ねねが晴れ晴れとした涙顔で魅せて幕引き。
小一郎:中村雅俊さん
他の作品であれば、主演クラスの中村雅俊さんがクレジットタイトル的には二枚目としての働きを存分に発揮された様相。兎に角、さりげなく存在感を発揮しない道理がない。改めまして、何とも贅沢のキャスティングです。
万福丸のことでは、秀吉と小六の内輪揉めを何とか落着させようとしたり。万福丸のことで秀吉に対して疑心暗鬼になっていた義姉・ねねの誤解を解く。
ほんと、秀吉ファミリーになくてはならない存在に成長した小一郎。
そんな小一郎を好演された演者の中村雅俊さんも、おそらく現場ではなくてはならない存在であったことでしょう。中村雅俊さんのクランクアップ後の撮影現場は、もしかすると士気が大きく下がった可能性も。
同様に、劇中から小一郎が去った時、秀吉ファミリーに暗雲が漂っていく流れ。
兎に角、中村雅俊さんと小一郎の同化が色んな意味で目立ってきましたね。
やや:浅茅陽子さん
秀吉殿はもっともっと御苦労されたのじゃ(やや)
秀吉が小谷から帰還したにもかかわらず。出迎えようとしなかった、姉を諫めた、やや。ややが秀吉をフォローするような発言に思わずびっくり(笑)ある意味で、劇中で成長する登場人物を橋田先生が表現した一幕にも。
ねねが秀吉を信じている時、ややは秀吉を非難し。ねねが秀吉に疑心を抱いている時、ややは秀吉をかばう。このような表裏一体の姉妹が明らかに表現された一幕でしたね。兎に角、ややはねねの逆に逆に(笑)
ちなみに、ややの出番が少なかったのは、小谷が落城したことに起因して魅せ場が他に多かったので致し方ないところ。
まつと利家:音無美紀子さんと滝田栄さん
今、家康を攻められたら援軍を送ることもできぬ(利家)
それほどまでに信長様は、窮地に立たされておられますのか(まつ)
女子(おなご)の案じることではない(利家)
こうした亭主関白というか、男尊女卑の情景を橋田先生が描写するための駒として登場しない法はなかった、まつと利家(笑)
嘉助:せんだみつおさん
いやー、美しい御方じゃ。戦の巻き添えにしてはもったいないわ(嘉助)
第十回の嘉助に関しては、この台詞につきるかな(笑)結構、驚愕レベルかもね。
これも戦国の習いとでもいいますか。
みつ:東てる美さん
おみつ殿!少しも気が付きませんでした(ねね)
御話が御済になるを御待ちしておりました。皆様、御変りのう。(みつ)
やっぱり、おみつってくノ一っぽいかもね(笑)
それでいて「御」の使い手でもあり笑
私はまだ御勤めがございます。それではこれで。(みつ)
万福丸の死因とか殺めた実行者については語らなかった、おみつ。
ばつが悪そうな立ち去り方がとっても美味(笑)
長政:風間杜夫さん
盟友・朝倉義景の自害を、お市に語りだす直前の長政。描写のされ方が何とも、あの世に足を踏み入れて止まない様相が何とも寂しげ。
というわけで、お市や子供たちと今生の別れを終えて長政の幕引き。
個人的には、演者の風間杜夫さんに関して、クレジットタイトルが連名だったのが遺憾かも。もちろん、長政と勝家の連名は、見方によっては乙。それでも初登場回では、お市との絡みで、橋田先生からの試練と化した尋常でない長台詞をこなして魅せましたからね。やはり、ねねはもちろん、秀吉との絡みがなかったのが痛かったかな。
前向きに考えれば、大映テレビ『スチュワーデス物語』のよき踏み台になったということで。
勝家:近藤洋介さん
元亀三年の元旦。信長は、新年の年賀の儀、長男・信忠、次男・信雄(のぶかつ)に次いで、三男・信孝の元服を行い、諸国の城主、武将たちが、慶賀のために参集した。(語り)
勝家に関しては、冒頭に信孝の烏帽子親として登場したのが印象的。
長政の最期、そして信孝と勝家。橋田先生が着々と物語を展開している様相にも。
藤孝:角野卓造さん
殿が京にて兵を挙げると仰せられますか(藤孝)
それはなりません!信長様は、上様を奉じて上洛し、足利幕府の再興に力を尽くされた御方。今もって将軍家を立て、臣従の礼を尽くされております。(藤孝)
義昭が挙兵の意向を明らかにした一幕で登場。
義昭:津村鷹志(旧芸名・津村隆)さん
信玄の上洛に呼応して挙兵したのが運命の分かれ道。
特に、第十一回は駆け足で義昭が劇中から姿を消していった様相にも。
兎に角、演者の津村鷹志さんが大胆のカメラ目線を披露して止まなかった印象。
信長:藤岡弘(現・藤岡弘、)さん
茶々はなかなか気丈な姫と見えるのう(信長)
茶々は末頼もしい子じゃ(信長)
どうしても演者の藤岡弘、(旧芸名・藤岡弘)さんの人の好さが出てしまって止まない信長の笑顔が印象的。
お市:夏目雅子さん
橋田先生のお市は、どちらかと言えば、台詞回しで魅せるよりも、存在感で魅せることができる女優さんがハマりますね。そういった意味で、第十一回「小谷落城」を観ている限り、夏目雅子さんのお市はベストキャスティング。
とも:長山藍子さん
この二、三日、ろくに口も利かれぬ。気にしてれば一緒に暮らせぬわ(とも)
というわけで、大きな魅せ場はなく、ねねの居候というか御荷物として(笑)回が増すごとに、ねねの側近としてのポジションを確立させつつあった、とも。
森弥五六:ガッツ石松さん
再び、森弥五六が物語に出張ってきた印象。この辺は、やはり橋田先生の意向が大きいかも。
何と言っても、登場させるか否かは橋田先生が決めることだから。
秀吉が猿顔で初を笑わせようとした一幕。もっと、ガッツさんにも猿顔を駆使して絡んでほしかった様相にも(笑)ガッツさんの究極の猿顔を見てみたかったかな。その点が残念。
小六:前田吟さん
ある意味で、第十回「小谷落城」は蜂須賀小六役だった前田吟さんの回と言っても過言ではないかも。かなり魅せまくりましたね。ほんと、渡鬼好きとしても前田吟さんの御活躍は結構嬉しかったりと。
秀吉の意に反して、万福丸を串刺しにして晒した小六。その所業、すべては秀吉の為に。
このあたりも、伏線というか、橋田先生がしっかりと種を蒔いた印象にも。
兎に角、前田吟さんと西田敏行さんの絡み。見応えがありましたね。
秀吉:西田敏行さん
第十回「小谷落城」の西田敏行さんは絶品クラスですね。
これまでの「じゃがのう」とか語尾の不要な笑いとか無くて。
橋田先生の長台詞に踊らされているよりも全然よかった印象。
こうした本意気の西田敏行さんって凄く素敵です。
あまりの徒然に 門に瓢箪吊るして 折節風が 吹い(秀吉の歌唱)
まずは、再び滑稽風味の秀吉の舞(笑)
そして、ここから本番!
お市、茶々、初、ごうの救出作戦。
西田敏行さんの面相一つ一つがマジって感じ。
さあさあ、お初様。この秀吉の顔をとくとご覧くださりませ。これが本当の猿じゃ!(秀吉)
そんな中でも、西田敏行さんの猿顔に大爆笑!
そして、夏目雅子さんと西田敏行さんと言えば『西遊記』で共演。故に、お市と秀吉のツーショットが何だか嬉しかった限り。
このあたりも、秀吉の扮した西田敏行さんの鬼気迫るパフォーマンスが絶品。ほんと、スイッチが入りまくりでしたね。素晴らしい。
例え御芝居とは言っても、万福丸の串刺しは結構堪えたんじゃないかな。当時、西田敏行さんにだって、同じ年頃の娘さんとかいたもんね。
この頃の秀吉に関しては、万福丸の死を心底悲しんだものと捉えたいですね。
やっぱり、長台詞とかで饒舌の秀吉を前面に押し出すよりも、こうしたアツいパフォーマンスの方が当時の西田敏行さんには合っていない道理がないですね。
本当に素晴らしかったです。
気にならない道理がない子役の演技
第十回「小谷落城」で大活躍だった茶々と初に注目してみました。
茶々
やはり抱いてしんぜよう、のう(嘉助)
触るな!汚らわしい!(茶々)
まさにNHKおしんの加代の前世の様相にも(笑)
気高いねー。
信長の面前でも首(こうべ)を垂れない茶々(笑)
ほんと、幼少の茶々としては、かなりはまり役の様相。
食べとうはありませぬ(茶々)
信長もたじたじ(笑)
ほんと、いい目をしていましたね。
初
さあさあ、お初様。この秀吉の顔をとくとご覧くださりませ。これが本当の猿じゃ!(秀吉)
当時の西田敏行さんの猿顔が(爆笑)あんなの目の前にしたら大喜びしない法はないよね。
秀吉の面相に最初は笑うけど、途中で我に返って笑いを閉ざすシナリオだったのかな。
それにしても、よく大笑いしなかったよね。当時の西尾まりさん。
兎に角、芸歴が長いです。
次回に続く
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