NHK大河ドラマ『おんな太閤記』第十三回「世継秀勝」の登場人物と演者の情景について、あれこれと随想したいと思います。
第十三回「世継秀勝」の概要
秀吉は、母のなかが長浜城にやって来たので大喜びで迎えると、側室・千草と息子・秀勝のことでなかに突然しかられます。なかはねねに同情しながらも、息子・秀吉のため懸命に頭を下げるため、ねねは岐阜へ帰ることを思いとどまり、秀吉の世継ぎとして秀勝を慈しみ育てようと心に誓います。ある日、利家とまつが子供たちと一緒に訪ねて、以前交わした約束通り、産まれたお豪をねねと秀吉の養女として育ててほしいと言います。
クレジットタイトル
NHK大河ドラマ『#おんな太閤記』第十三回「世継秀勝」クレジットタイトル
作:橋田壽賀子
音楽:坂田晃一
(中略)出演
1佐久間良子 2中村雅俊 3浅茅陽子 4音無美紀子
連名G
中G:1滝田栄 2長山藍子
連名G
トメG:1赤木春恵 2尾藤イサオ 3前田吟 4西田敏行
(後略)#おんな太閤記クレジット pic.twitter.com/YCUy99zXR4— 渡る世間の片隅で (@watasumi_net) June 25, 2022
NHK大河ドラマ『#おんな太閤記』第十三回「世継秀勝」クレジットタイトル、連名G
泉ピン子 せんだみつお
東てる美 宗近晴見
津島恵子 戸浦六宏沢田雅美 木原光知子
(後略)#おんな太閤記クレジット— 渡る世間の片隅で (@watasumi_net) June 25, 2022
ねね:佐久間良子さん
やはり第十三回でも惜しみなくカメラ目線を披露してくれた演者の佐久間良子さん
そこで、ねねの気になったカメラ目線とその時の台詞を合わせてご紹介!
案じることはない。なるようにしかならぬわ。(ねね)
こうした大事な台詞の時には、しっかりとカメラ目線できめてこない道理がない当時の佐久間良子さん(笑)
藤吉郎の為に、ねねさにそばに居てもらいたいのじゃ(なか)
なかの口上中に。
私は古女房(ねね)
西田敏行さんの面相変化とセットでお楽しみください(笑)
秀長:中村雅俊さん
やはり第十三回でも、ねねと秀吉の夫婦仲を修復させるために気苦労があった秀長。
妾の千種、そして千種が産んだ秀吉の子・秀勝を秀吉が長浜城に招き入れたことで生じた兄夫婦の離縁の危機。兎に角、ねねを説得して耐えてもらうために。まずは、秀吉にビンタを御見舞いするなど、秀吉におかんむりだった母・なかを土下座で懐柔。その上で、なかと一緒に、土下座でねねを説得した流れ。
ちなみに、秀吉の髭が無くなっていることにいち早く気づいたのは秀長でした。
やや:浅茅陽子さん
歳月の流れを印象付けるためか、ややの髪型が変わっていましたね。その効果もあってか、ややの女っぷりが結構上がっていた様相にも。やーやー、やーやーうるさい、ややがすっかり影を潜めましたね。居候の、なかに「御荷物」とか口が過ぎることもなく。
長政殿も百二十石の士分に御取立ていただいて、下働きの者も抱えられるようになった。今までの浅野の家とは違う。手は十分に足りております(笑)でも、御姉様は十二万石の殿様の御内室。百二十石とは「月と鼈(すっぽん)」じゃのう(笑、やや)
鼈のやや(笑)このあたりの台詞は面白かったですね。
まつ:音無美紀子さん
幕引き近くの一幕のみに利家と共に登場した、まつ。腹を痛めてこしらえた実の娘を、ねねと秀吉に譲渡する役どころということで、クレジットタイトル四枚目としては十分の働きだった演者の音無美紀子さん。
台詞もかなり自己主張していましたし。
ただ、秀吉殿には御嫡男がおありなそうな。あの時とは事情が変わりました故。(まつ)
ねね様の御気持ちはよう。御子がおられぬ時よりも、側室に御子がおできになった方が、もっともっと御寂しゅうございましょう。お豪でそのお気持ちが少しでも慰められるのでしたら。(まつ)
秀吉殿は罪な御方じゃ(まつ)
女子(おなご)は女子同士。ねね様に喜んでいただけましたら、もうそれで。(まつ)
同じ女子(おなご)の立場から、ねねへの気遣いと秀吉への嫌み(笑)が表現されていましたね。
きい:泉ピン子さん
戯けもほどほどになされ!儂は今の嘉助さで十分じゃ。兄さのように平気で女を作られてたまるか!大名のおかかなど御免じゃ。そんなことが分かったらたたき出してくれるわ。(きい)
とりあえず、侍のおかかについては御免じゃなくなったみたいだけど。大名のおかかにはなりたくないみたい。基本的に、きいが言ってることは、あんまり前から変わっていない様相。
ちなみに、きいの髪型も変わりましたね。
みつ:東てる美さん
はい(みつ)
御方様(みつ)
台詞は二言のみ。それでも、ねねを心配する、おみつのビジュアルがよかったですね。
こほ:津島恵子さん
差し出がましい申しようではございますが、これからは秀吉殿とて、何人も側室を置かれるようにおなり遊ばすやもしれません。それが、今の世の習いでございます。それくらい御覚悟なされておいででなければ、大名の御方様は務まりませぬ。女子(おなご)にとっては一番辛いこと。女子(おなご)の私にはよう分かります。それでも、このようなことを申し上げるのは、御方様が少しでもお聞き分け下されたら御気も休まるのではないかと。御方様にお仕えする者の老婆心にございます。(こほ)
大名のおかかになりたくなかった、御方様のねねに対して。大名の御方様としての心得を説いた、こほ。教育係の様相を呈した、こほに対して、ねねが心を開かないのも必然かも。
それでも、御内室のねねを心配して止まない、こほの情景も切ないですね。
利家:滝田栄さん
実の娘・お豪を、ねねと秀吉に譲渡した利家。これって、かなりポイントが高いかも。
秀吉と敵と味方に分かれて敗れた場合、秀吉からすれば利家のことを許すのも道理。
とも:長山藍子さん
ああ、ああ。弥助さが大名になってくれたら、それくらいの辛抱はいくらでもするわ。のう、御勤めに精を出して、早う側室の持てるようなってくだされ。(とも)
まあ、弥助さも嘉助さも、城持ち大名にはなれぬわ。のう、せめて孫七郎や小吉を立派に育てて、父(とと)様の代わりに出世をしてもらわねばのう。(とも)
夫や子供たちの出世を切望する、ともの台詞には史実的伏線という名の種が着々と蒔かれている様相。ジェットコースターに例えると、ゆっくりと上がっている段階。それ故に、頂点から一気に下がる時が末恐ろしくない法はない。
千種:沢田雅美さん
兎に角、大活躍の様相を呈した第十三回の千種。演者の沢田雅美さんが物凄く千種にハマっていましたね。
兎に角、生命線は「秀勝の母親」ということ。それだけで向かうところ敵なしの様相を呈した千種って。多かれ少なかれ、態度が浅はかかもね。兎に角、厚顔無恥の千種に扮した当時の沢田雅美さんが美味。
私は秀勝殿の母親じゃ。御方様にもおふくろ様にも頭を下げるようなまねはせぬ。女子は子を産んだ者が本当の奥方じゃ。子も産めぬ女子(おなご)に偉そうな顔はさせぬ。力ずくでも御前様は私のそばにいてもらう。(千種)
面倒くさい女を表現して止まない当時の沢田雅美さんがとっても女狐の様相を呈していて新鮮(笑)渡鬼を見慣れているから、なおさら。
面相大臣ですね。おっかないバージョンも素敵(笑)
キミと久子の前世
第十三回に勃発した、なかと千種の対立。まさに、前世のキミと久子の様相を呈した一幕でしたね。
先攻はキミ。
ええか?はっきり言うておく。おみゃあさは、この子を産んだかもしれぬが、この子は藤吉郎とねね殿の子じゃ。おみゃあさにはもう縁はない。おみゃあさをこの城に入れたのは藤吉郎の間違いじゃ。それが分ったら、とっとと出ていきなされ。(なか)
秀吉の母、ねねの姑としては当然だった女の言い分。
対するは、後攻の久子。
御前様にそのようなことを言われる筋合いはないわ。私は秀吉殿に来てくれと言われたから来たのじゃ。私は秀勝の母親じゃ。他に母親は要らぬ。秀勝がこの城にいる限り、私は秀勝のそばに居る。誰にも何も言わせぬ。(千種)
秀吉の母である、なかに対して「御前様」だって(笑)久子、言うよねー。まさに秀勝の母親、向かうところ敵なし。
そしてキミの反撃。
藤吉郎!こないな女子(おなご)に大きな口を叩かせてよいのか!とっとと追い出せ!(なか)
「追い出せー」の赤木春恵さんの言い方とかね(笑)ちょっと気になったので。
沢田雅美さんの厚顔無恥ぶりが折り紙付きといった様相にて。赤木春恵さんもたじたじ(笑)ほんと、素晴らしい女の戦でしたね。
なか:赤木春恵さん
兎に角、物語を大きく展開させた、なか。第十三回は本当に、なかの回でしたね。なかの見どころがてんこ盛りでした。
ラグビーのように
藤吉郎は儂の倅じゃ!構うてくれるな!(なか)
藤吉郎!出てこい藤吉郎!こら!(なか)
まずは冒頭の情景。演出効果が目立っていた印象にも。
なかの突進がラグビーのモールとでもいいますか(笑)横綱相撲で近習たちによる制止を退けつつ。
最後に「こら!」と叫んだ後、何やら素の面相に戻るかのような閉口表現が意味不明で美味(笑)
強烈のビンタ!
なかが秀吉に御見舞いした強烈のビンタ(笑)西田敏行さんの面相変化からも、赤木春恵さんのビンタが恐ろしかったことが小気味よく伝わってきましたね(笑)兎に角、破壊力満点といった様相で素晴らしかったです。
小六と長政:前田吟さんと尾藤イサオさん
トメGの前田吟さんと尾藤イサオさんは冒頭の一幕に登場。
何事じゃ。緊急の事態以外は取次無用と申してある。(小六)
小六の台詞はこれだけ。長政に関しては台詞なし。
まあ、赤木春恵さんとか沢田雅美さんが大活躍の回でしたので。
秀吉:西田敏行さん
なかに強烈のビンタを御見舞いされたり、ねねに蓄えていた髭を頂戴されたりと。秀吉が何かと痛い目に遭わない法はなかった身から出た錆。
個人的には、秀吉が鏡越しにカメラ目線を披露してくれたのがよかったですね。以前の手鏡の情景では、秀吉が鏡越しにカメラ目線を披露してくれなかったと思うので。
次回に続く
週刊おんな太閤記随想、第十三回「世継秀勝」
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