NHK大河ドラマ『おんな太閤記』第十二回「城主の妻」の登場人物と演者の情景について、あれこれと随想したいと思います。
第十二回「城主の妻」の概要
天正3年(1575)春、ねねは今浜城に入り、城主の妻としての生活を始めますが、たくさんの侍女に囲まれて戸惑います。秀吉は今浜を長浜と変え、長く栄える国にする夢を語ります。利家とまつも祝いに訪れ、次に娘が生まれたら秀吉とねねの養女にする約束をします。喜びもつかの間、秀吉の側室・千草と息子・秀勝も入城します。ねねは子どもの産めない妻は去るべきと秀長に言い残して城を出ると、そこに義母のなかが現われます。
クレジットタイトル
NHK大河ドラマ『#おんな太閤記』第十二回「城主の妻」クレジットタイトル
作:橋田壽賀子
音楽:坂田晃一
(中略)出演
1佐久間良子 2中村雅俊 3音無美紀子 4津島恵子
連名G
中G:1滝田栄 2長山藍子
連名G
トメG:1前田吟 2尾藤イサオ 3赤木春恵 4西田敏行
(後略)#おんな太閤記クレジット pic.twitter.com/ImqyagzO1U— 渡る世間の片隅で (@watasumi_net) June 18, 2022
NHK大河ドラマ『#おんな太閤記』第十二回「城主の妻」クレジットタイトル、連名G
泉ピン子 せんだみつお
東てる美 宗近晴見
沢田雅美 木原光知子戸浦六宏 ガッツ石松
小林一三 菅原ちね子 羽鳥靖子
河原裕昌 斧沢安比沙 南友紀
(後略)#おんな太閤記クレジット— 渡る世間の片隅で (@watasumi_net) June 18, 2022
ねね:佐久間良子さん
ねねに関しては、色んな意味で見どころ満載だった第十二回。
囲炉裏の燃料として入れる枝を膝でへし折った情景とか(笑)こんなの、侍大将のおかか時代には見せたことがありませんでしたので。
そして、秀吉が他所の女子(おなご)に子を産ませていたことを知った時の、ねねね。結構な長台詞でしたが、ねねの悲哀を漂わせながら無難に長台詞をこなしていた印象。
特に気になったのは、ねねの女子(おなご)アピールね。これは、演者の佐久間良子さんの艶っぽいパフォーマンスが多かったとかじゃなくて。やたらと台詞の中に「女子(おなご)」が多かったわけです。このことは、決して、ねねに限ったことではありませんが。秀吉とか、他の演者も何かと「女子、女子」と(笑)
ねねの女子(おなご)発言を拾っていくだけでも、ねねがどんな人だか一目瞭然でわかるというもの。
私は杉原のうちを出て、浅野のうちへ養女に参りました女子(おなご)。
私は働くことしか能のない女子(おなご)。
わたしくが湯に浸かった時に洗えば済むもの。女子(おなご)の嗜みでございます。
私は秀吉殿を信じて今までついてきた女子(おなご)。
女子(おなご)の浅はかさとお笑いくだされ。
御世継ぎもできぬ女子(おなご)がおかかなどと大きな顔をして、秀吉殿のおそばに居たことが間違いじゃった。
私は、何の御役にも立たなかった女子(おなご)。でも、私にも女子(おなご)としての誇りがあります。
輿など要りませぬ。私は、長浜から出ていく女子(おなご)。
橋田先生、本当にくどい(笑)文末を「女子(おなご)」で留めるのが比較的、御好きだったみたい。
秀長:中村雅俊さん
秀長と言えば、ねねと秀吉の夫婦間のコーディネートに徹した様相の第十二回。
千種と秀勝の親子を入城させたことに憤った秀長が、振り向きざまに秀吉を睨みつけた面(めん)がなかなかの絶品。いい感じで顎も割れていましたし。
兄者!兄者には心というものがないのか!義姉様がどのような思いをなされているか考えたことあるのか!(秀長)
心を語った秀長の台詞から、瞬時に中村雅俊さんのヒット曲「心の色」を思い出した方は同世代に近いかも。
まつ:音無美紀子さん
まつの台詞で気になったのは概ね二つ。
やっと落ち着かれたのじゃ。今度こそ、ややを御産みなされませ。ややができればお暮しも違うてまいりましょう。(まつ)
はい。今年の暮れにもう一人。(まつ)
ほんと、子宝に関して、ねねとの対比が色濃く描写された一幕。このあたり、橋田先生が徹底させてますね。くどいくらい(笑)
こほ:津島恵子さん(初)
第十二回より、ねねの侍女筆頭格として姿を現した、こほ。あまり、面相表現に変化がない、こほを演者の津島恵子さんが見事に好演されていました。
こほのために用意された台詞も、いい味醸し出していました。
御方様には道中御障りもなく何よりでございました。私は、こほと申す者。御方様の御身の回りの御世話を取り仕切らせていただきます。どうぞよろしゅうお願いいたします。(こほ)
おあさ殿は、まだ奥の御勤めに御慣れになりませぬゆえ、しばらく、こほがお預かりいたします。(こほ)
召使いは御呼び捨てなされるのが道理かと心得ます。御方様は、また洗濯などなさいましたそうな。(こほ)
これくらい、キャラが徹底していると、橋田先生として描写しやすそう。
こほに関しては、橋田先生の期待を一身に受けて、死語を連発してほしいものですね(笑)
きい:泉ピン子さん
ねね一行が今浜城に到着した直後に登場。
兄さと義姉様ではないか。何が失礼じゃ!(きい)
兄の秀吉が城持ち大名になっても、相変わらずの、きいを表現した当時の泉ピン子さん。
みつ:東てる美さん
第十二回に入って、慣れてきたのか。だいぶ、おみつの面相表現が豊かになってきた様相にも。
新しく長浜城に採用された侍女が御内室と勘違いして、輿に乗っていた、ともに御挨拶をしてしまった情景では、おあさとともに、いいリアクションを面相で表現していましたね。
あと、気になったことといえば、白粉(おしろい)の濃度(笑)だいぶ塗ってきた印象にも。物語の中で、おみつはおみつで年を重ねていることを演出したかったのかも。
千種:沢田雅美さん(初)
渡鬼の久子の前世の様相を呈した千種。満を持して、沢田雅美さんの登場です。
長浜城に正室がいるのもお構いなしで乗り込んでくるくらいですからね。
かなりの肝っ玉を持ち合わせた妾の様相にも。
気になったのは、劇中で秀吉が千種と目を合わそうとしていないように見えたことかな。西田敏行さん、もしかしたら沢田雅美さんのことが苦手とか(笑)あくまでも憶測ですが。
進之助:木原光知子さん(初)
進之助の登場で、何だか情景が宝塚の様相に。美男子設定ということで、秀吉に男色の気があったのかなとか、いろいろと想像させてくれるキャラですね。
そういえば、演者の木原光知子さんって。橋田先生に水泳の手ほどきとかしたんですよね。
利家:滝田栄さん
まつの体内から産まれる、ややが女子(おなご)だったら、ねねと秀吉の夫婦に譲渡することを約束した利家。こうした秀吉夫婦との関係が中G筆頭の所以とでも言いますか。
それにしても。
ねね殿もお寂しかろう。どうじゃ、まつ?次に産まれる子が女子(おなご)なら。(利家)
はい。秀吉殿とねね様なら慈しんでいただけましょう。(まつ)
なんなんでしょうね、この夫婦(笑)どうみても、熟慮したようには見えない。
このあたりも、当時の橋田先生なんだよね。まだまだ。
とも:長山藍子さん
特に、第十二回のともで印象的だったのは目ん玉のパフォーマンス。きっと、ご本人は意識してやってそうだけど。素晴らしい仕上がりでしたね。こうした点も、長山藍子さんが技巧派演者の所以。それでいて、さりげなくかましてくるからね。
例えば、こういうのとかも。
歩き疲れた、ねねと輿に乗って疲れた面相の、とものコントラストね。これも、脚本に忠実だった長山藍子さんの個人技がさりげなく光っていました。
家次:戸浦六宏さん(初)
この度、家定共々、秀吉殿の御召しを受け、禄を頂戴することに相なった。久しぶり、ねね殿の顔が見られて嬉しいぞ(家次)
というわけで、秀吉に召し抱えられた、ねねの伯父・家次役の戸浦六宏さん。
個人的には幼少期から観ていた映画『真田幸村の謀略』の大野治長役が懐かしいところ。
ただ、今どきの人は、朝ドラ『マー姉ちゃん』の再放送でお馴染みといった印象があるかも。ヒロイン・マリ子の義父役でしたからね。
小六、弥五六、又十郎:前田吟さん、ガッツ石松さん、河原さぶさん
今浜城に到着して間もなく、ねねが御内室として挨拶した家臣団の中に居た、小六・弥五六・又十郎。演者の前田吟さん、ガッツ石松さん、河原さぶ(旧芸名・河原裕昌)さんが一瞬だけ登場した一幕。
沢田雅美さんなど、他の連名役者の活躍に比して、トメG筆頭の前田吟さんがほんの一瞬しか登場しないとか。寂しい限りですね。
浅野長政:尾藤イサオさん
同じく、浅野長政役の尾藤イサオさんも、ねねが挨拶した家臣団の一人として、ほんの一瞬だけ登場。ちなみに、尾藤イサオさんもトメGなんですけど。
なか:赤木春恵さん
あーあ、どえらい城を建ててまって。戦をして、人を殺して、栄耀栄華をして何になる。後生(ごしょう)のええはずはなあわ。南無阿弥陀仏、南無阿弥陀仏。(なか)
わしゃ、とんでもにゃあところに来合わしたらしいのう(なか)
いよいよ、尾張の中村から今浜に独りで出張ってきた、なか。ねねの人生に大きく関わるキーマンとして、物語のクライマックスを大きく盛り上げましたね。
門番とのいざこざでは、なかが米俵の様相を呈していましたね(笑)門番役の演者も、相手が赤木春恵さんということで、何となく慎重に持ち運ばない道理がなく。
秀吉:西田敏行さん
ほんと、秀吉として色んなパフォーマンスを披露して止まない演者の西田敏行さん。
ねねを御姫様抱っこしながら回転したり。ねねの物語って、見方によってはシンデレラストーリーなんだけど。シンデレラになることを、ねねが望んでいないから、御姫様抱っこが秀吉の自己満足にしか見えない道理がないかも。
パカパカパカパカ!(秀吉)
さらには、秀勝を背に乗せて御馬さんに扮したりと。人気スターの西田敏行さんによる御馬さんでしたからね。子役が素で楽しそうにしていた様相にも。
次回に続く
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