NHK大河ドラマ『おんな太閤記』第九回「秀吉生還」の登場人物と演者の情景について、あれこれと随想したいと思います。
第九回「秀吉生還」の概要
NHKオンデマンドの場合
浅井長政の寝返りで織田軍は退却し、殿(しんがり)の秀吉は消息不明です。ねねは心配な毎日を過ごします。義妹のきいも、夫の弥助や兄たちの身を案じて、尾張の中村から出てきました。まもなくして、秀吉が命からがら逃げ帰りました。しかし、信長は岐阜へ戻って体制を立て直して、1か月後には姉川の合戦で浅井・朝倉軍を打ち破ります。信長は引き続き、比叡山を焼き討ちにし、女子供を含めて大勢の人々を殺害します。
第九回のクレジットタイトル
NHK『#おんな太閤記』第九回「秀吉生還」クレジットタイトル
作:橋田壽賀子
音楽:坂田晃一
(中略)出演
1佐久間良子 2中村雅俊 3浅茅陽子 4音無美紀子
連名G
中G:1藤岡弘 2夏目雅子 3長山藍子
連名G
トメG:1滝田栄 2尾藤イサオ 3赤木春恵 4西田敏行
(後略)#おんな太閤記クレジット pic.twitter.com/5NSufPZQAD— 渡る世間の片隅で (@watasumi_net) May 28, 2022
NHK大河ドラマ『#おんな太閤記』第九回「秀吉生還」クレジットタイトル、連名G
泉ピン子 せんだみつお
久米明 三條美紀
宗近晴見 菅原ちね子風間杜夫 近藤洋介
石濱朗 角野卓造
津村隆 新井みよ子
若駒 鳳プロ 国際プロ 早川プロ 劇団いろは#おんな太閤記クレジット— 渡る世間の片隅で (@watasumi_net) May 28, 2022
ねね:佐久間良子さん
第九回では、ヒロインとしてのパフォーマンスを前に押し出してきた印象。
いくつかピックアップします。
カメラ目線が顕著に
だいぶカメラ目線が顕著になってきた、ねね役の佐久間良子さん。
まずは冒頭にて、秀吉の帰還ではなく、おあさの戸の開け閉めを目の当たりにして。複雑の胸中をカメラ目線で表現した、ねね。
お市様は、もう、浅井の御方になられてしまわれたのですね(ねね)
続いて、秀吉を相手に、お市の様相を言葉にした、ねねとか。あまりにもカメラ目線が大胆不敵過ぎて(笑)
そして幕引き直前、小一郎とのやりとりにて。叡山の焼き討ちにて、秀吉が信長の命に従って女子供を殺めていたと思っていたら、実は密かに逃してやっていたことを知らされた、ねね。
ほかにも、カメラ目線ギリギリのライン(笑)も結構あったりして。ヒロインの場合、特に魅せなくてはいけないので、カメラ位置を逐一気にするのが道理。
御前様の口調を真似て魅せる
儂がついておれば信長様は御安泰じゃ(ねね)
さりげなく披露された、ねねによる秀吉のモノマネ(笑)
すなわち、演者の西田敏行さんの口調を真似た佐久間良子さんを売りにしたら。それはそれで、結構面白そう。
布団は譲れない
もう寝る!おかか、中村へ行こう。のう、中村へのう。(秀吉)
何だか舞台の一幕を魅せられたようで(笑)素晴らしい。
秀吉から布団を取り上げる、ねねの面相が業師(わざし)の様相を呈していて(笑)秀吉のすっ転び方も実に絶品。演者の佐久間良子さんと西田敏行さんの息がぴったりでしたね。
竹ぼうきを取り上げてスキップ
秀吉との布団の取り合いに続いて。今度は、ともを相手に竹ぼうきをめぐる攻防(笑)
そして、掃き掃除をしながらのスキップ。このあたりは、脚本による指示なのか、それとも佐久間良子さんのアドリブも十分に考えられますね。
小一郎:中村雅俊さん
兄・秀吉とともに、金ヶ崎の退き口から生還した小一郎。演者の中村雅俊さんが、さりげなく上目遣いで疲労困憊を表現された様相にも。カメラ目線のジャッジとして陰性かな(笑)惜しかったけど。
ねねの相談役と化してきた小一郎が、かけがえのない存在に。こういう人が日常的にいれば、カウンセラー要らずだね(笑)
終いには、義姉・ねねと実姉・ともの狭間にて(笑)小姑問題を抱えた、ねねを気遣った小一郎。
やや:浅茅陽子さん
人がこれほど案じていたというのに、何も話してくれずに寝てしまう法はないではないか!(やや)
これくらい、疲労困憊した夫に配慮できない、おかかは珍しいかも(笑)個人的には離縁したくなるかも。
鼻までつまむ始末だし(笑)これって脚本による指示なのか?それとも、浅茅陽子さんによるアドリブなのか??よくわかりませんが。
まつ:音無美紀子さん
おそらく劇中に登場しなかったであろう、まつ役の音無美紀子さんがクレジットタイトルには名を連ねることに(笑)
これって意図的だったのか、単純に御仕事が杜撰のだけだったのか??当時の制作の状況や意図がつかめない次第。
きい:泉ピン子さん
まさに作者の依怙贔屓(えこひいき)を一身に受けて(笑)兎に角、大活躍だった、きい役の泉ピン子さん。何だか、きいの好感度をアップさせたいかのような作者の意図が見え見え(笑)それ故に、見た目の仕上がりも好調でしたね。当時の泉ピン子さん、結構かわいい。そうした中で、異彩を放っていたのが「お化けじゃ!」の情景(笑)面相表現が絶品でした。
こうした面相表現あたりは、昨今の泉ピン子さんに近づきつつありましたね(笑)
信長:藤岡弘、さん
元亀二年九月。信長は突如、叡山を侵し、山王二十一社、東塔の坊舎をことごとく焼き払い、老若の僧徒、千数百人を殺戮した。度重なる僧兵、門徒の反抗に報い、その跋扈を懲らしめるためであった。殺生禁断の霊場に対する信長の暴挙は、各地にある末寺の僧侶たちを震え上がらせた。(語り)
こうした絵面にするために(笑)制作と藤岡弘、(旧芸名・藤岡弘)さんが、ああでもないこうでもない、と対話している様相とか、空想すると楽しいかも(笑)
ちなみに、天下を獲った秀吉の夢枕に登場する信長の映像として使い回しても、充分に通用しそうな仕上がりにも(笑)
お市:夏目雅子さん
儂を恨んでおろうな(長政)
といった長政からの愚問(笑)に対しても、しっかりと綺麗事で対応した、お市の方が印象的。お市の方の本音としては、長政のことも恨まない道理がないだろうから(笑)
あとは、語尾の「ませ」と「まし」の両方を拝聴できたのが美味(笑)
どうか御無事で、御帰りなされてくださいませ(お市)
私が信長の妹だということはお忘れくださいまし(お市)語尾
個人的には「まし」の方が死語の様相を呈していてタイプかも(笑)
ちなみに、語尾が「ませ」だったり「まし」だったり、一貫していないのは。どちらかと言えば、作者の考えが一貫していないことに起因する可能性も(笑)よくわかりませんが。
とも:長山藍子さん
私は間違うていた。弥助さあを侍なんぞにしたばっかりに、孫七郎を父親(てておや)のいない子供にしてしもうた。(とも)
このあたりの情景は渡鬼の前世っぽいかも(笑)感情的になっている妹・きいを背後から冷静に見守る、ともが如何にも長女っぽくて。今だからこそ、贅沢の一幕になりましたね。
それはさておき。
またそのような弱音を(とも)
全然懲りてないし(笑)
藤吉郎の血を引くのは我らの子だけじゃ。大事に産んで、大事に育てねばのう。(とも)
下からのアングルで捉えられた恍惚の面相が(笑)長山藍子さん、かなりパフォーマンスを押し出してきた様相にも。
ねねから竹ぼうきを奪い取られてから。ねねに視線を投げかけた、ともが漂わせ過ぎていて(笑)さりげなく魅せるのが、とっても御上手。
藤孝:角野卓造さん
信長には、浅井・朝倉の後ろに上様がおられることを承知と見えますな(細川藤孝)
とりあえず、細川藤孝役の角野卓造さんが再登場。
とりあえず、台詞があったのでよかったですね(笑)
利家:滝田栄さん
浅井方の横山城を包囲した信長本陣の一幕で登場。台詞なし。
なか:赤木春恵さん
じゃが、もしもほかの者が何かあった時は、ねねさともども中村へ帰ってこい(なか)
女子どもで百姓をしていけば飢え死にすることはあるまい(なか)
懲りた時はもう遅いのよのう(なか)
男は戯けじゃ、みんな大戯けじゃ!(なか)
相変わらず、同じことを繰り返し述べない法はない、なか。ほんと、何処かの神社に戯け大明神として祀られていない道理がない様相にも(笑)
秀吉の所業を否定する役回りは、はっきりしているんだけど。それはやはり、演者の赤木春恵さんの存在感あってこそ、説得力があるのかな。
秀吉:西田敏行さん
ねね役・佐久間良子さんの項で上述しました通り、ねねに布団を取り上げられた秀吉のパフォーマンスは絶品でしたね。
そのほかに関しては、これまでの回に比して秀吉が控えめだった印象にも。今までがアピールし過ぎの様相を呈していたこともありますから(笑)
このくらいがちょうどよい塩梅かも。
週刊おんな太閤記随想、第九回「秀吉生還」
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