
画像:NHK『おんな太閤記』第二回「足軽女房」
橋田壽賀子作品のNHK大河ドラマ『おんな太閤記』と言えば。おなご目線の戦国時代が悲喜交々と描写されているわけですが。それは、ヒロイン・ねねといったメジャー武将のおかか(妻)だけに限らず、足軽のおかかたちの情景も巧みに表現されていましたね。
というわけで、橋田先生が当時の庶民である足軽女房の悲喜交々を表現する、とっておきの駒として登場させたのが、お美代。演者は、橋田・石井ファミリーの一員として、何かと脇役で貢献してきた大鹿次代さん。やはり、橋田先生の狙い通り、とっておきの情景で大鹿次代さんが、おなごの悲哀を醸し出したわけです。
それでは、大鹿次代さんが扮した、お美代の登場回を振り返っていきたいと思います。
NHK公式情報


お美代を見よ!
NHKおんな太閤記で大鹿次代さんが扮した、お美代の登場回を通して、戦国時代における足軽女房の悲喜こもごもを検証していきます。
第一回「出会い」天下一の雑炊

画像:NHK『おんな太閤記』第一回「出会い」
尾張・織田信長家の足軽たちが住まう長屋の片隅で。
小手があまい、小手が!腰が入っとらんわ!(前田犬千代)
出典:NHK大河ドラマ『おんな太閤記』第一回「出会い」

犬千代、偉そうに(笑)
御苦労様でございます。そろそろ、昼飯になさいませ(藤吉郎)
出典:NHK大河ドラマ『おんな太閤記』第一回「出会い」
というわけで、藤吉郎や、あさとともに姿を現した、お美代。

こしらえた雑炊と一緒に、お美代に扮した大鹿次代さんが颯爽と登場。

画像:NHK『おんな太閤記』第一回「出会い」
そして藤吉郎の居所に入っていくと。
美味そうな雑炊じゃのお。お美代殿の雑炊は長屋のおかかの中で敵う者はおらぬわ。天下一の雑炊じゃ(秀吉)
出典:NHK大河ドラマ『おんな太閤記』第一回「出会い」

お美代が藤吉郎より先に天下を獲っちゃったよ(笑)

「天下一の雑炊じゃ」なんて、殿方に褒められたら。おなごなら嬉しくない道理がないよね。
犬千代様も、さぞお喜びであろう。亭主どもの大事なご指南役じゃあ。せいぜい、おもてなしをせねばなるまいさい、のお?(秀吉)
出典:NHK大河ドラマ『おんな太閤記』第一回「出会い」

秀吉が妙に早口。これも橋田壽賀子脚本対策なのかな(笑)台詞の忘却と対峙した役者の一幕。

それじゃ、あたしどもは(お美代)
出典:NHK大河ドラマ『おんな太閤記』第一回「出会い」

やっと、お美代の明瞭な台詞
また雑炊か(前田犬千代)
出典:NHK大河ドラマ『おんな太閤記』第一回「出会い」

犬千代、お喜びではない(笑)居候の分際で

画像:NHK『おんな太閤記』第一回「出会い」
前回まではお美代の雑炊が一番だったのにね。#おんな太閤記 第二回
— 渡る世間の片隅で (@watasumi_net) April 9, 2022
第二回「足軽女房」お美代の心配り

画像:NHK『おんな太閤記』第二回「足軽女房」
藤吉郎とねねの新婚生活がはじまった。ねねにとって、足軽組頭の暮らしは、実家である浅野の養父も同じ足軽組頭であるところから、慣れているつもりであった。が、藤吉郎との所帯は、いろいろと勝手の違うことばかりであった。
出典:NHK大河ドラマ『おんな太閤記』第一回「出会い」語りより

背後で腕組みした藤吉郎が妙に偉そうで癪に障る(笑)語り中に談笑していた、お美代の面相が清々しかった一幕。

画像:NHK『おんな太閤記』第二回「足軽女房」
あれ、まな板は?(お美代)
見当たりません(ねね)
それはお困りでしょう(お美代)
さっ、うちのを使いなされ(お美代)
これで間に合います(ねね)
ほかにいろいろと不自由なことがおありになったら何なりとおっしゃってくだされ。わたしどもでできることならお手伝いしますほどに(お美代)
出典:NHK大河ドラマ『おんな太閤記』第一回「出会い」

お美代のまな板をシャットダウンした、ねねだったけど。さりげない、お美代の心配りが嬉しくない道理がない。
第五回「墨股築城」お美代の御前様が!

NHK大河ドラマ『おんな太閤記』第五回「墨股築城」
墨股築城における斎藤龍興との攻防戦にて。ねねやや姉妹の御前様(おまえさま)たちが命を拾った一方で。
おまえさまー!おまえさま!あー!おまえさまー!(お美代)
残念じゃが、今息を(名無しの足軽)
おまえさまー!!おまえさま(お美代)
お美代殿(ねね)
ねねさまー、この人わたし独りおいてえ、おまえさま、必ず生きて帰ってくるって言うたではないかあ!おまえさまー!(号泣のお美代)
出典:NHK大河ドラマ『おんな太閤記』第一回「出会い」

庶民レベルの、おなごが戦国時代に泣かされた情景。橋田先生が描きたかった、とっておきの悲哀。

橋田・石井作品で脇役に徹してきた功労者の大鹿次代さん。橋田先生としては、とっておきの情景に信頼できるバイプレーヤーを投入した様相。

「槍の稽古が至らず、申し訳なかった」とか、利家の謝罪は描写なし
必ず生きて帰ってくるって言うたではないかあ!おまえさまあ!😭
墨俣築城でお美代の御前様が命を落とした一幕。作者がとっておきの場面で大鹿次代さんを起用した足軽女房の悲哀。
画像:NHK大河ドラマ『#おんな太閤記』第五回「墨股築城」 pic.twitter.com/Hy96nJiaEr
— 渡る世間の片隅で (@watasumi_net) May 1, 2022
第五回「墨股築城」足軽女房の生活保障

NHK大河ドラマ『おんな太閤記』第五回「墨股築城」
一方、留守を預かるねねも忙しかった。出兵している秀吉の配下の家族の面倒から、足軽たちの女房や娘を集めて、籠城に必要な物を作るのも、ねねの仕事であった。
出典:NHK大河ドラマ『おんな太閤記』第一回「出会い」語りより

お美代もいたー!
少しは、落ち着かれましたか?(ねね)
はい、足軽の女房になりました時に、いつかはこのようなことになると覚悟しておりました。持って生まれた定めでございましょう。(お美代)
折を見てお話ししようと思っておりましたけれども、お美代殿にはお子もない、頼る方もない、とうかがっております。よろしかったら、うちへ来てくださいませぬか?秀吉殿も戦が続けばおらぬことも多くなりましょう。ひとりでは心細い時もあります。考えてみてはくださいませぬか。(ねね)
ありがとうございます。わたしのような者を御心にかけていただきまして(美代)
おなごはおなご同士、助け合っていきましょう。このような世の中でありますからこそ、なお。(ねね)
出典:NHK大河ドラマ『おんな太閤記』第一回「出会い」

足軽女房の戦後補償。こうした情景も橋田先生ならでは。

雑炊づくりに長けていた、お美代。秀吉の胃袋をおさえたことで、秀吉の妾とかになっていた可能性も無きにしも非ずといった様相ですが。そこまで、お美代の役が広がりを魅せるかどうか。
お美代役の大鹿次代さん
#大鹿次代 1930年5月17日生、東京出身、女優。TBS『ありがとう』シリーズや東芝日曜劇場など、石井ふく子プロデュース作品に多数出演。#今日は何の日#渡鬼人物録
TBS『橋田壽賀子ドラマ 渡る世間は鬼ばかり』第2シリーズ第22回、旅館の仲居役 pic.twitter.com/ZDbeFzHFX3— 渡る世間の片隅で (@watasumi_net) May 16, 2020
週刊おんな太閤記随想
