NHK大河ドラマ『おんな太閤記』第十六回「秀吉蟄居」にて。上杉謙信公がこしらえた漢詩「九月十三夜陣中作」が劇中に登場しました。このことは、作者の橋田壽賀子先生が謙信公に一目置いていたと言っても過言ではないかも。
というわけで、謙信公の漢詩が登場した一幕をまとめてみました。
第十六回「秀吉蟄居」の概要
秀吉は、信長の命で上杉謙信と戦う柴田勝家を援護するため越前に出兵しますが、勝家と衝突して信長の許しもなく兵を引き上げて長浜に戻ってしまいます。秀吉がなぜ信長の命に背いたのか、ねねには分かりませんでした。信長は秀吉を打ち首にすると激怒しますが、ちっ居処分で済みます。すると、秀吉は毎晩酒宴を開き、信長の側近に付け届けをして金を使い果たします。それは、信長に盾つく気などないと証明するためでした。
参考サイト
「公益社団法人関西吟詩文化協会」公式サイト
秀吉、謙信公の漢詩を読解する!
八月十四日、能登七尾城が上杉謙信の手に落ちましてございます(みつ)
うん?とうとう落ちたか。これで能登は上杉謙信のものとなったのう。柴田勝家はじめ、あれほどの武将が越前へ出陣しながら、むざむざ謙信に敗れてしまうとは。よほどの男よのう、謙信は。(秀吉)
何だか橋田先生が謙信公を持ち上げてきた様相。
七尾城攻めの前夜、謙信は城外の陣中にて、仲秋十三夜の月をめで、能登一国を手中に収める胸中をこの歌に託した由にございます(みつ)
っていうか、謙信公がこしらえた漢詩をいち早く入手しちゃう、おみつって凄くない??橋田先生、かなり強引だったかも(笑)
霜は軍営に満ちて秋気清し
数行の過雁月三更
越山あわせ得たり能州の景
さもあらばあれ家郷遠征を憶う
(秀吉朗読)
秀吉が朗読した!
秀吉って百姓の倅だったから、文(ふみ)の読み書きを体得するのだって大変だったはず。漢詩だとハードルが上がりますよね。なのにスラスラと!
ちなみに、読みについては「公益社団法人関西吟詩文化協会」公式サイトから引用します。
しもはぐんえいにみちて しゅうききよし
すうこうのかがん つきさんこう
えつざんあわせえたり のうしゅうのけい
さもあらばあれ かきょうの えんせいをおもオを
無論、漢詩を読み解くこと自体、学習が必要となるわけですが。
「越山あわせ得たり能州の景 さもあらばあれ家郷遠征を憶う」。ほう、これが上杉謙信という男か(笑)勝家風情では、とても太刀打ちできる相手ではないわ(笑)信長様も、情けない御家来を持たれたものよのう。これでは、いよいよ越前も危ないのう。(秀吉)
秀吉が、朗読だけでなく読解までも!
秀吉は本当に自力で漢詩を読解することができたのか?実際のところ、よくわかりませんが。
あれだけ多忙だった秀吉、漢詩の学習に時間を費やすことは現実離れの様相にも。
故に、秀吉に漢詩の読解能力が備わっていたことを描写した橋田先生に関しては、浮世離れポイントが高めかも(笑)要は、強引だったってことです。
じゃがのう、秀吉の言葉を通して勝家と比較しつつ、謙信公のことを大した人物として描写したかった橋田先生の気持ちが何となく伝わってきますね。それは、わざわざ秀吉に謙信公の漢詩を読解させたことからも明らか。
兎に角、作者の橋田先生が謙信公をリスペクトした一幕でした。
週刊おんな太閤記随想、第十六回「秀吉蟄居」
第十六回「秀吉蟄居」について、渡隅版のまとめ記事
週刊おんな太閤記随想
当サイトがこしらえたNHKおんな太閤記関連の記事をまとめたページの綴り