NHK大河ドラマ『おんな太閤記』第十一回「筑前守任官」における橋田壽賀子作品らしかった部分をあれこれと随想します。
第十一回「筑前守任官」の概要
秀吉は近江平定の戦功で小谷城がある浅井の旧領を与えられて12万石の大名になり、羽柴越前守秀吉と名乗ります。弟の小一郎は羽柴秀長に名を改めます。ねねは城主の奥方になりますが、お市の恨みが残る小谷城への入城を拒みます。そのため、秀吉はねねのために今浜に城を築きます。ねねは義母のなかを訪ねて今浜へ誘いますが、なかは中村を動きません。帰り道、2人の少年が秀吉の家来になりたいとねねについてきます。
ねねと秀吉の価値観が合わない
大名のおかかでは不足か?(秀吉)
いいえ。私には分不相応で御座います。(ねね)
これからは、水仕事などはさせぬぞ。儂のおかかになって十三年、よう働いてきた手じゃ。楽をしてくれのう。好きなだけ、栄耀栄華もさせてやれる。ねね。(秀吉)
いや(ねね)
ねねはのう、羽柴筑前守秀吉のおかかじゃぞ!(秀吉)
私は、栄耀栄華などしとうはありません。しとうてもどうしたらよいか分かりません。私は、今のまま、忙しく働きまわるのが性に合うております。(ねね)
相変わらず欲がないのう。おかか(笑)
会話がかみ合っているように見えて、全然かみ合ってない(笑)
相変わらず、ねねの果報を秀吉がスルーしない法はない(笑)
演者の謙遜がバトンリレー化する
第一走者:秀吉
小六殿以下、あちらの面々は、稲葉山攻めの時から儂と生死を共にしてくれた剛の者たちで御座います。彼らの働き無くば、今日の秀吉はありませなんだ。特に、小六殿は儂の右腕になってもろうて。儂はよい友に恵まれました。(秀吉)
第二走者:小六
いやいや、儂はただ我武者羅だけが取り柄でのう。何と言うても、秀吉殿を陰から支えてこられたのは秀長殿じゃ。温かい御人柄、部下からの人望も厚い。秀吉殿の補佐役は何と言っても秀長殿じゃ。実(まこと)に良い弟御をお持ちじゃ。(小六)
第三走者:秀長
いやあ、儂はまだ兄者にくっついてきただけのことじゃ。実(まこと)の補佐役は義姉様よ。兄者のことは誰よりもよう御存じで、兄者が存分に働けるよう、しっかりと留守を守っておいでじゃった。今日の兄者があるのは、ひとえに義姉様のおかげよ。疎かに思うたら罰が当たるわ。儂が許さん!(秀長)
第四走者(アンカー):ねね
見事な謙遜のバトンリレー(笑)
又十郎が名前を言い間違える
いやあ、殿!わしゃ、禄などは要りませんぞ。わしゃ、秀吉殿を見込んでついてきた。のう、弥兵衛も言え!(又十郎)
殿の出世は儂らの出世や!(弥五六)
正しくは「弥五六も言え!」だよね(笑)これって、河原さぶさんが単純に台詞を間違ったのか、それとも脚本の記載ミスなのか??
役者さんたちが「あれ?河原さん、やっちゃった?」みたいに見えない道理がないかも(笑)特に、弥兵衛役だった尾藤イサオさんが一瞬だけ醸し出した神妙の面相とか(笑)
城持ち大名になった息子を迷惑がる
何が出世じゃ。藤吉郎はお市様の御子、万福丸様を串刺しにして、晒し者にしたというではないか。世間では鬼じゃと言うておる。おかげで、母親の儂は肩身の狭い思いをしとるのじゃ。情けないわ。(なか)
いやもう帰れ帰れ!帰れ!このとおりじゃ。藤吉郎のおかげでこっちは迷惑しとるわ。(なか)
ほんと、橋田先生が表現する、なかは一貫して秀吉を認めない(笑)
ねねが小谷への転居を頑なに拒否る
小谷だけは嫌でございます。行きとうありませぬ。行かれませぬ。(ねね)
あの御城では、浅井久政様、長政様が御自害遊ばされました。万福丸様も。お市様の御恨みも籠っておいでになりましょう。そのような所へとても。つろうございます。私のわがままは分かっております。でも、小谷だけは嫌でございます。それでも行けと仰るなら私。(ねね)
もういい。分かった。分かった。(秀吉)
こればっかりは、ねねの気持ちを秀吉が認めない道理がない。
当然だよね。
秀吉からの鞠を浅井三姉妹が順番に拒否る
秀吉の自業自得だし、拒否られて当然なんだけど。
茶々、初、お江の順番で鞠を放っていくから(笑)
笑えない道理がない絵面でしたね。
信長に愚問を唱えさせる
清州へ参りとうございます(お市)
清州へ?(信長)
清州は私が大きゅうなった所。今は叔父上、信包殿が居られます。叔父上のおそばなら、姫たちと心安らかに余生を送ることもできましょう。(お市)
市、儂を恨んでいるのか?(信長)
当然だろ(笑)信長、お市に恨まれていないとでも思っていたのか??
ねねが城持ち大名のおかかを想像できない
十二万石の城持ち大名になる為には、せねばならぬことが山ほどある。家臣を集めねばのう。おかかに仕える女子(おなご)どもも探さねば。(秀吉)
いいえ。私にはあささんさえいてくれれば。(ねね)
橋田先生、いくらなんでも極端過ぎる(笑)
これでは、ねねがお馬鹿さん過ぎるよね。そんなわけはないと思う(笑)
小姑が御荷物ライフを満喫したい
私は行かずともええじゃろう?そのような山の中で暮らしては坊たちがかわいそうじゃ(とも)
ねねさが岐阜に残られるのならその方がええ。ねねさは坊たちを慈しんでくださる。離れ離れになっては坊たちもねねさもかわいそうじゃ。(とも)
居候というか、ねねの御荷物として御厄介になってる方が、ともは非常に楽そう。
家事とか、ともファミリーの分まで全部ねねがやってそうだし。
尾行する子供は末頼もしい
何処へ行かれる。私についてきても私は知らぬ。(ねね)
御方様、追い払いましょうか?(従者)
(笑)無駄じゃ。追い払っても諦める子ではないわ。なかなかの根性よ。末頼もしいわ。(ねね)
これでは「なかなかの根性」とか「末頼もしい」の説明が足りない。だって、ねねのことを尾行しただけのことでしょ。それだったら、他の子どもでもできそうだよね。
こういう時こそ、長台詞が欲しいよね(笑)橋田先生、当時はまだまだ発展途上だった様相。
秀吉が指歯磨きを披露する
橋田先生って、劇中に殿方の身だしなみ動作を取り入れるのが好きかも。
例えば、大吉の髭剃り。
そう言えば。11月30日は #鏡の日 だったみたいですね。というわけで、劇中にて📺鏡の前でT字カミソリの髭剃りを披露した藤岡琢也さん🪞🪒#今日は何の日 #渡鬼髭剃り #大吉と節子
TBS『橋田壽賀子ドラマ 渡る世間は鬼ばかり』第1シリーズ第29回 pic.twitter.com/oCij0itMZ8— 渡る世間の片隅で (@watasumi_net) November 30, 2021
こういう動作って、演者が真剣にやってくれると本当に見応えがあるんだよね。
ねねが二足歩行にこだわり、小姑の親子が輿に乗る
ねねとその御荷物(笑)こと、小姑・ともの関係を象徴するかのような一幕でしたね。
ともとしては、ねねと一緒に居て楽ではない道理がない。だって、輿に乗車する権利とかも譲ってくれるんだから(笑)
ほんと、橋田先生ったら(笑)
次回に続く
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