TBSテレビ『橋田壽賀子ドラマ 渡る世間は鬼ばかり』のビンタ場面をご紹介します。今回は第1シリーズ第2回で岡倉節子が四女・葉子にお見舞いした記念すべき渡鬼の初ビンタ!伯母・森山珠子が在住するハワイの大学を卒業したにもかかわらず、照明の勉強を続けたくて再びハワイに行こうとする葉子。対して、葉子を珠子の養女に取られたくないのでハワイ行きに反対する節子。この親子の顛末に要注目です。
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渡鬼ビンタを嗜む!
本記事は、渡鬼のビンタ場面を「エンターテインメント」として嗜むために作成しました。
「渡鬼ビンタ劇場」の開設趣旨等については、下記ページをご確認ください。
序章
まずは渡鬼第1シリーズの記念すべき第1回のおさらいが必要。
ハワイから日本に一時帰国した岡倉大吉の姉・森山珠子。ということで、珠子の一時帰国を祝う会が岡倉邸にて催されて岡倉一族が集まった様相。そして、珠子が在住するハワイの大学を4か月前に卒業した葉子、第1回の放送でようやく日本に帰国した状況。
葉子の帰国を待ちくたびれていた節子
岡倉五姉妹のうち、長女・弥生、次女・五月、三女・文子は他家に嫁いでいる状況。四女の葉子はハワイに留学していたことから、岡倉家には五女の長子しかいなかったわけです。
ここで岡倉家には後の世の渡鬼まで尾を引く大きな問題があったことに気づく。この点については、渡鬼第1シリーズ第1回の中の石坂浩二さんのナレーション内容を引用してみます。
石坂浩二さんのナレーション:男の子の名は、大きな志(こころざし)「大志(だいし)」と決め、男子出生を待望して五人の子どもをもうけることになったのですが。ついにその名をつける男の子に恵まれませんでした。
このことから、当時の状況を加味したうえで、葉子か長子の結婚相手には婿養子になってほしいという節子の思惑が見え隠れしているかも。
それ故に、節子としては、ハワイの大学を卒業した葉子に一日も早く帰ってきてほしかったわけですね。
にもかかわらず、ハワイの大学を卒業して4か月後にようやく帰国した葉子。その理由とは?
ハワイの大学で照明を専攻していた葉子
葉子:私が先行している照明は、やっぱりハワイの方が進んでるの。だからどうしても欲がでちゃって。
〈中略〉
葉子:今一番「ナウい」仕事なのよ。もうしばらくは大学に残って勉強したいの。教授もすすめてくださっているし。
葉子から「ナウい」(死語)、いただきました(笑)
「やっぱり」って??当時、照明の学問は日本よりもハワイの方が進んでいたらしい。
とにかくハワイの大学を卒業したにもかかわらず、ハワイでもっと照明の勉強がしたかった葉子。そのため、ハワイに在住する伯母・珠子の存在は葉子にとって大きかったわけですね。
そして、日本に一時帰国した姉・珠子から大吉・節子夫婦に葉子のことで相談事が。
葉子を養女にほしい珠子
珠子:葉子ちゃんを森山のうちへ養女に欲しいの。うちは子供がないでしょ。で、森山の遺してくれたもの、誰も継いでくれないんじゃもったいないし〈中略〉葉子ちゃんなら3年以上も私が預かって気心も知れてるしハワイの暮らしにも慣れてるし。
珠子は夫と死別したこと、珠子には子供がいないことが読み取れます。
もう1年、ハワイの大学で勉強したい葉子。珠子にとっては願ったり叶ったりな状況。
しかし、葉子を珠子の養女にするつもりはなく、再びハワイに行かせたくない節子。ところが、大吉としては。
大吉:私はいいんだ。姉ちゃんには世話になってるしさぁ。姉ちゃんがそんなにね、葉子を気に入ってくれたんなら言うことないさ。ただ、こういう話は葉子の気持ちが肝心だしさぁ。
節子:お父さん。
珠子:じゃぁ、大ちゃんはいいのね。
大吉:決めるのは葉子でしょう。
節子の気持ちに反して、葉子を養女に欲しいという珠子の願い事を前向きに聞き入れた大吉。5人の娘がいるので、一人くらい珠子に渡してもよいと思っている様子。
珠子と大吉は姉弟ということで。この二人の過去を簡単に振り返る必要がありそう。
珠子に恩がある大吉
それでは第1シリーズ第1回のラストシーンを検証。
大吉:姉ちゃんには恩がある。姉ちゃんと俺はたった二つしか違わないけどさぁ。おふくろは早く死んじゃって、俺には姉ちゃんが母親代わりだったんだよ。あんたが嫁に来るまでは姉ちゃん結婚もしないでさぁ、俺の面倒みてくれたんだよ。それを思うとね、姉ちゃんにはどんなことしたってさぁ。
節子:それと葉子のこととは別でしょ(怒)
大吉:姉ちゃんはね、物も金も有り余るほど持ってんだよ。恩返ししたくたってしようがないんだよ。葉子が欲しいって言うんならばせめて。
節子:そんな勝手なことを(怒)
大吉:葉子がその気でいるんだったらいいじゃないか。葉子もそれで幸せになれるんだったらさぁ。
〈中略〉
節子:3年以上も寂しい思いをして待ってたんです。もうどこへもやりませんから。やりませんからね!(怒)
珠子に恩義がある大吉の気持ち、わかるなぁ。5人も娘がいるから一人くらい養女に出してもよいような気がします。大吉が語った通り、あとは葉子次第。
対して、節子。尋常ではない葉子への強い思い入れが表現されています。節子は男児を産めなかった分、葉子と結婚する相手には婿養子になってほしい思いがありそう。それ故に、葉子を珠子の養女に出す行為は、節子にとって本末転倒な状況となるわけで。
そしていよいよ第1シリーズ第2回、渡鬼ビンタ劇場の開幕です。
開幕
現場は岡倉邸内の葉子の部屋。
再びハワイへ向かう葉子の荷造りを手伝う節子。「どうしても行くの?」と寂しい思いを葉子にぶつけるわけで。
対して、節子の話を左から右に流しながら荷造りに頭を悩ませる葉子。
「葉子、真面目に聞きなさい」と徐々にヒートアップする節子。
そしていよいよ葉子が弁舌を発揮して節子の怒りを煽る展開に。
葉子:私はねぇ、今ハワイで勉強したいだけなの。そのためには珠子おばちゃんに助けてもらわなくちゃならないし、養女になるのが条件ならなってもいいと思ってる。
節子:まぁ、よくもそんな勝手なことを。
葉子:私の人生は私が決める。誰の指図や干渉も受けない。
節子:生意気なこと言うんじゃないの。一人で大きくなったとでも思ってるの?誰のおかげでそんな口がきけるんですよ。
節子に頭を下げてハワイに行かせてもらうのが無難路線。
ところが、とにかく自己主張が著しく強い岡倉一族の葉子。節子の感情を害することもお構いなし。
そしてさらに弁舌を発揮する葉子。
ビンタを誘引する葉子
葉子:すぐに恩に着せるお母さんは。それはお母さんには、お乳飲ませてもらいました。おしめもかえてもらいました。毎日ご飯食べさせてもらって学校へもやってもらって。病気の時は寝ずに看病もしてもらいました。けど母親なら当然のことでしょ。それが嫌なら子ども産まなきゃよかったのよ。
これは。言われたら尋常でないくらい腹立たしいかも。
相手にある事柄を伝える際、表現によって受け手の印象は大きく異なるもの。
「すぐに恩に着せるお母さんは。」で葉子は止めておくべきであったと。「それはお母さんには」以降はかなり言い過ぎ。一言どころか、二言三言多すぎる。
ということで、節子を挑発した葉子。そしていよいよ、今日のその時です。
その時、節子が動いた!
「それが嫌なら子ども産まなきゃよかったのよ。」と葉子に弁舌を発揮された節子。
この瞬間、節子に背後をとられてしまったことが葉子の敗因か。
背を向けた葉子の右のかいな(腕)を両手でしっかりとホールドする節子。
そして葉子の面相を振り向かせた節子。
何とも重たい眼差しの節子と見つめ合ってしまった葉子。
その瞬間、節子の右のかいなが大きく動く。
節子がしっかりと肩を入れて葉子の面相にビンタをヒットさせる瞬間。
瞬時に瞼を閉じる葉子の反射神経も印象的。
この瞬間だけ妙に神聖な葉子。
神様!
✋ぱちーん!
節子にビンタを喰らった瞬間、若くて艶々したロン毛を振り乱す葉子。
同時に「あっ」という葉子の美声も聞こえてきましたね。
ビンタを馳走した節子のフォルムも凛々しくて綺麗だ。
お二人とも絵になるなぁ。
葉子、大丈夫か?脚にきていないか??
そんなことよりも、葉子の綺麗な面相が心配だ。
節子に引っ叩かれたことでよい表情を醸し出す葉子。
とりあえず葉子役・野村真美さんのお顔が無事で何より。
口の中も切れていない様子。瞬間的に歯を食いしばったのかも。
節子役の山岡久乃さん、ビンタを終えた後に肩で呼吸する描写もよかった。
ということで、節子にビンタを馳走された葉子。
少しは大人しくなるかと思いきや。
さらなる驚きの展開が待ち受けていました。
お母さん、誇りを持ちなさい
葉子:お母さんって損な性格ね。母親が子供に恩を着せるようになったら、お終いよ。
節子:葉子、葉子、葉子、葉子。
節子に弁舌で対応する葉子。岡倉一族の性格が色濃く描写されました。
ビンタを面相にヒットされても、節子のペースにはならない展開。
そして、待っていたのは葉子の独壇場。
渡鬼名物・長台詞。それにしても凄い量だなぁ(笑)
葉子:お母さん、誇りを持ちなさい。娘が自分の道を自分で選べるまでに成長したの。お母さんが育てたのよ。お母さんが自信を持って育てた娘なら、娘を信じて黙って見守ってくれるのが母親でしょう。お母さん、お母さんは立派に母親の役目を果たしたの。これからは自分のことを考えて。やっとそういう時が来たんじゃないの。いつまでも娘のことでくよくよするなんてバカよ。母親が心配したって娘は少しもありがたくないの。うっとおしいだけなんだから。苦労して育ててさぁ、今になって嫌われたんじゃ引き合わないでしょ。酷いこと言うと思っているだろうけど、いつか誰かがはっきり言わなければ、お母さん気が付かないから。それじゃお母さん、不幸でしょ。親孝行のつもりで言うの。
「お母さん、誇りを持ちなさい。」と(笑)凄いセリフだなぁ。
これが一筋縄でいかない岡倉一族の四女・葉子の性(さが)。
節子も葉子には大変だったわけだ。
反面、葉子に「これからは自分のことを考えて。」と説教されたことが、大吉が起業した「お食事処 おかくら」の女将として手腕を発揮する原動力になったのかも。
まとめ
第1シリーズ第2回で勃発した記念すべき渡鬼初のビンタ場面をご紹介しました。
ビンタを馳走した節子役の山岡久乃さん、ビンタを喰らった葉子役の野村真美さん。
お二人とも素晴らしいパフォーマンスでしたね。
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過去鬼は「TBSチャンネル」で視聴できます。