NHK大河ドラマ『おんな太閤記』第十七回「乙御前の茶釜」では、ねねの妹・ややの安土行きを妬んだ、ねねの小姑の気持ちが露わになりました。
というわけで、橋田壽賀子作品故に描写された小姑との共存について注目してみました。
第十七回「乙御前の茶釜」の概要
天正5年(1577)、秀吉は謀反を起こした松永久秀を滅ぼし、中国攻略を押し進めます。三木城主・別所長治が調略に応じ、秀長は三木城で侍女になっていたしのと再会します。その年の暮れ、信長はねねの内助の功をねぎらう宴席を設けて、秘蔵の乙御前(おとごぜ)の茶釜を秀吉に与え、茶会を開くことを許します。その宴席でねねは信長の四男・於次(おつぎ)丸と出会い、羽柴の跡継ぎにしたいと信長に願い出ます。
主な登場人物
ねね
ねねの妹・やや
ねねの小姑・とも
ねねの小姑・きい
ねねの姑・なか
ねねの夫・秀吉
安土でゆっくりと御正月を
その年の暮れも押し詰まった頃、突然秀吉が長浜へ帰ってきた(語り)
ああ、皆そろうておるのう。息災で何よりじゃ。(秀吉)
お帰りなさいませ。
なんぞ、なんぞあったのか?(とも)
ともときいも長浜城内で暮らしている雰囲気がありますよね(笑)長浜移転当初、嘉助と弥助は足軽大将だったけど、しっかりと屋敷を与えられたはず。何だか、小姑シスターズが城内に居ついてしまっている様相にも(笑)
いや、安土でのう、信長様に御目にかかる。播磨のことをご報告がてら、御祝いに参上する。信長様がのう、右大臣になられてのう。目出度いことよのう。おっ母様、たんと土産を持ってきたぞ。姉様も、それから、きいにものう。(秀吉)
で、安土へはいつ?(ねね)
明日じゃ(秀吉)
まあ、慌ただしいことでございますな(ねね)
おかかも一緒じゃぞ(秀吉)
秀吉のおかか、ねねの安土行きに関しては暗黙の了解といった様相。そりゃそうですよね(笑)
御久しゅうございます。ちと所用がありまして伺うとりました。(やや)
ああ、ちょうどよかった。使いをやるところじゃった。やや殿ものう、一緒に安土へおじゃれ。長政が安土に来ておる。(秀吉)
ちと所用がない方が、ややにとってはよかったかも。じゃがのう、こうした時にはどうしても居合わせてしまうのが橋田壽賀子作品の道理。
まことでございますか?(やや)
安土でゆっくりと御正月を過ごされたらよかろう。儂もおかかもそのつもりよ。(秀吉)
まあ!(やや)
ややを秀吉が喜ばすなんて珍しい
小姑たちの不満
嘉助さは?(きい)
うん?秀長と共に竹田城の守備に就いておる(秀吉)
弥助殿は?(とも)
小六殿と姫路じゃ(秀吉)
何じゃ、長政殿は安土へ御供で、弥助殿と嘉助さは播磨へ置き去りか(きい)
長政は儂の側近ぞ。安土で何かと用を足してもらわねばならんのよ。(秀吉)
嘉助さとて、一生懸命御勤めに励んでおるのじゃ。兄さのそばに置いてはもらえぬのか?(きい)
旦那には近くに居てほしいという至って単純の発想
嘉助や弥助の役回りの方が城主になれる可能性は高いのに。側近では大名になることが難しいのは、信長の側近が証明している様相にも。他方、信長の側近ではない秀吉は織田家中で一二を争う出世頭ですからね。
きいよ、少しは藤吉郎の身にもなってやれ。播磨には他の御家来衆も大勢残っていなさる。藤吉郎とて我が身内ばかり連れ戻るわけにはまいらんではないか。(なか)
おっ母様が秀吉をかばった!これって初めてかも
ねねさの御身内が大事
藤吉郎はのう、ねねさの御身内が大事なだけのことじゃ(とも)
姉さ(秀吉)
とも、口が過ぎる
こうした時の、ともは空気を読む概念がない(笑)
思わず絶句した、ねねやや姉妹(笑)
こうした時、ややの口が過ぎない(笑)
そうではないか。その証拠に藤吉郎の側近は皆、ねねさの御身内ばかりではないか。我らの身内は小一郎も嘉助さも弥助殿も皆、戦にばかり駆り出されて。(とも)
姉さ!いくら姉さでも、言うていいことと悪いことがあろうが(秀吉)
ともの「そうではないか」も定番の口調にも。兎に角、言い方が(笑)
やはり、とも。きいとは一味も二味も違う。
質が悪い小姑を当たり前のように好演した演者の長山藍子さん。只々、素晴らしい。
御前様、さあ湯に浸こうておいでなさいませ(ねね)
あ(舌打ち、秀吉)
秀吉殿の支度がございますので。やや。(ねね)
場の空気を入れ替えようとした、ねね。まわりを見渡せば、空気を読まない人たちばかりなので(笑)
おかかも苦労じゃのう
私たちをかばってくださるのは有難いと思いますが、御前様が口を挟まれては丸く収まるものも収まらなくなります。(ねね)
おかか(秀吉)
奥のことは私にお任せくださいまし(ねね)
おかかも苦労じゃのう(秀吉)
いいえ。とも様の御気持ちもよう分かります。あのようなことを気にしておりましたら、秀吉殿のおかかは務まりませぬ。(ねね)
小姑の不満に配慮した上で、ねねが事を丸く収める術とは
橋田先生が、おかかの手腕をアピールしようとした展開に
ややが行かずとなれば
あのようなことを言われて御姉様はよう黙っておられるのう(やや)
やや。此度の安土行きは思いとどまってくれぬか?惨いことは承知じゃ。長政殿にも会わせてやりたいことはやまやまじゃ。じゃが、とも様やきい様の手前それはできぬ。してはならぬのじゃ。(ねね)
そもそも、小姑たちの不満は、正月に夫・長政と安土で過ごせるという、ややの満足に対してのものが大きい。よって、ややが満足状態で無くなれば小姑たちと立場が同じ。故に、小姑たちの不満は無くなるというもの。しかしながら、ややの不満状態が新たに生じることに。
御姉様はこの御城の御内室ではないか。たとえ秀吉殿の御姉妹(きょうだい)とて、御姉様が何を遠慮なさることがあるというのじゃ。(やや)
ややとしては、小姑に気を遣っている姉に対してストレスがあるみたい
はあ、ややは婿殿をもろうた。長政殿の御身内への心遣いというものを知らぬ。じゃがのう、嫁に来て連れ合いの身内と一緒に暮らすには、それだけの気配りがのうては、おかかとしては務まらぬ。この通りじゃ。奥で波風が立つようなことがあっては秀吉殿に申し訳が立たぬ。弥助殿や嘉助殿が御帰りにならんのに、ややだけが安土へ行ったら、とも様やきい様が面白くないのは道理じゃ。ややが行かずとなれば納得もしよう。私とて辛い。腹も立とう。じゃが、私の立場も考えておくれ。(ねね)
嫁入りした者に心遣いが要求されることを、橋田先生が丁寧に説明された印象
婿を貰った、ややに対して、姑に加えて小姑まで抱えた姉の苦労が伝わっていなかったのも確か
ねねの場合、特に常日頃から長浜城内に小姑が入り浸っていて厄介の状況でしたからね
御姉様は御気の毒な御方じゃ。十二万石の御方様ともなれば、好き気ままに暮らせるものと思っていたが。御姉様の為なら安土行きも諦めねばなるまい(笑、やや)
やや(ねね)
足軽組頭のおかかの頃はよかったのう、御姉様。秀吉殿と二人っきりで。安土では夫婦水入らずじゃ。うんと秀吉殿に甘えておいでなされ。(やや)
姉から小姑への心遣いを語られてしまっては、ややが安土行きを諦めない道理がない展開に。
やや殿も因果なことよ
やや殿は行かれぬそうな?(きい)
あっ、ややには子が居ります。この度は遠慮するそうでございます。(ねね)
小姑の不満を解消をするために、ややが安土に行くことを遠慮させた、ねね。ややが遠慮したのではなく、ねねが遠慮させた構図。
やや殿も因果なことよのう。藤吉郎のおかかを姉さに持ったばっかりに、いらん気を遣わねばならんわ。(なか)
橋田先生が、なかを通して端的にまとめましたね(笑)
なかに嫌味を言われても動じることなく「当然だろ」の空気を面相で醸し出した、とも(笑)
それでは行ってまいります(ねね)
ではのう(秀吉)
以上、ねねが小姑の不満を丸く収めた一幕
ほんと、橋田先生が描写したい小姑は厄介で面倒くさい(笑)
週刊おんな太閤記随想、小姑問題カテゴリー
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