2022年4月からNHK BSプレミアム・BS4Kにて再放送がスタートした橋田壽賀子作品の大河ドラマ『おんな太閤記』。そこには橋田・石井ファミリーでお馴染みの顔、長山藍子さんも秀吉の姉・とも役で出演されていました。
というわけで、第六回「一夜城主」で長山藍子さんが扮した、ともに注目してみました。
第六回「一夜城主」の概要
NHKオンデマンドの場合
秀吉は小一郎や小六らと一夜で墨俣(すのまた)城を築き、城代として常駐します。隣家の利家とまつに第一子が生まれると、ねねも子どもを欲しくなりました。永禄10年(1567)8月、信長が美濃に総攻撃をかけると、秀吉の調略活動や前線部隊長としての活躍が功を奏し、稲葉山城は陥落。秀吉は信長から瓢箪(ひょうたん)の馬印を許されますが論功行賞はなく、気落ちします。しかし、ねねに励まされてやる気を取り戻します。
長山藍子さんのクレジットタイトル
ともの一幕
というわけで、本編では秀吉とねねが何かといちゃついていた情景が展開されていたわけです。
新年早々、秀吉宅に参る
ごめんくださりませえ(とも)
「ください」でなくて。でも、語尾は「まし」でなくて
ねねにお出迎えされた、とも夫婦
の
きいから御前様も小牧に帰ってると聞いて、の(とも)
語尾が「のう」ではなくて「の」。この場合の「の」は、「弥助、続きは御前が喋れ」というバトンタッチ的な指示語の意。
もう、明らかに御自身が魅せる情景であることを、長山藍子さんが自覚していない道理がない「の」だね(笑)
あっ、どうぞもう構うてくださるな。客に来たのではないちと頼みごとがあっての(とも)
おっと、左手でストップかけてきたぞー。展開してきたぞー。くるぞくるぞ
「客に来たのではない」から間をあけずに「ちと頼みごとがあっての」までの台詞回し。徐々に「長山藍子ワールドへようこそ!」って感じになってきたね(笑)
うちの人も御前様の下で
うちの人も、墨股に連れてってはもらえまいか?嘉助さと同じように御前様の下で(とも)
冒頭の気だるさを含んだ和やかの面相から一変。眼光にスイッチが入った様相だね。
語尾の「御前様の下で」でトーンダウンさせた話法
嘉助さあは、御前様に召し抱えられたそうな。大層大きな顔して帰っておじゃったわ。のう、嘉助さにできるものならうちの人にでも(とも)
「大層大きな顔して」で何段階か、音量を上げてきたね。加えて、面相にも抑揚を醸し出しながら、テンポよく台詞を回してきた様相にも。
弥助に焦れる、とも
か、か、か、嘉助さと儂とは違う(弥助)
瞬時に黄色信号に切り替わった、ともの目の色に注目(笑)
「御前は何を言い出そうとしているの?」が眼光で表現された面相にも(笑)
わ、儂は、とても戦などに恐ろしゅうて(弥助)
瞬時に弥助への落胆具合が表現された、軽蔑の眼差しへと(笑)
今の暮らしの方が性に合うとるんじゃ(弥助)
またそのような意気地のないことを!藤吉郎に任せておけば、よいよいに取り計らってくれるわ、なあ、藤吉郎?(とも)
とも、こわ(笑)
「またそのような意気地のないことを!」の部分。一気に音量を何段階も上げて、しかも棒読みで明瞭に台詞を回すこと。さらには、口角を駆使することで感情の起伏を総合力で表現。
長山藍子さんの、ともには小気味よいテンポがある
まさに、緩急を使い分ける技巧派ピッチャーの様相にも。今更ながら、上手いよね。
嫌じゃなどとは言わせぬ(とも)
その言い方と顔(爆笑)
たちが悪い、ともの一面が明らかに(笑)
藤吉郎はじめ小一郎も嘉助さあも我らが兄弟、皆侍になった(とも)
なぜ、語尾でトーンを上げることになった?
儂らだけ除け者にされるのは。な、そうじゃろ?(とも)
のおー!儂のことを少しでも大事に思うてくださるのなら、御前様からも藤吉郎にお願いしてくだされ(とも)
なかなか、侍になることに同意しない弥助に対して。「のおー!」と音量を上げながら焦れることで。一気に畳み掛けようとした、とも(爆笑)
ねねさはええのう
朝から晩まで、舅や姑に怒鳴られながら、畑仕事をしている儂の身にもなってほしいわ(とも)
橋田壽賀子作品の場合、比較的に舅の方は大人しいキャラがお決まりだったと思うけど。舅にも怒鳴られるなんて、珍しいかもね。意外と、ともが話を盛っていたりして(笑)
ねねさはええのう、姑の苦労ものうて(とも)
「ねねさはええのう」に入る前の間(ま)の取り方とか(笑)ほんと、面倒くさい、ともを長山藍子さんが好演!
羨ましがられた、ねねの面相が(笑)
なっ、うちの人が侍になってくれたら、儂もあの家を出られるう(とも)
また語尾上げてきたよ(笑)
舅、姑の辛い思いは、もうたくさんじゃ。なあ藤吉郎、頼む、儂の身にもなってくれ(とも)
最後は泣きの演技
ともって。ある意味では、空気が読めない典型的のタイプかもね
そして、家路へ
それじゃなあ、藤吉郎、よろしく頼む(とも)
どうも、いつもいつも。それじゃあな(とも)
はい、それじゃあ(とも)
劇中からフェイドアウトする、とも
色んな意味でやり遂げた感が漂っていた様相にも(笑)
嘉助への怨念
そして、夫の弥助も秀吉の配下として加わった稲葉山攻め。
その勝利を祝う宴にて。
きい。わしゃな、わしゃ、一番乗りしたんじゃぞ!のう、小一郎殿!弥助さは、腰抜かされてのう(嘉助)
一族の前で、夫を侮辱された、とも。
嘉助に対する、ともの怨念がひしひしと伝わってくるよね(笑)
瞬時の移り気を表現した長山藍子さん。上手いわ
「よくも皆の前で夫をコケにしてくれた、の」とか。「嘉助、夜道の独り歩きにはせいぜい注意しとけや」とか。長山藍子さんの表現力が視聴者の想像力をかきたてた一幕。
っていうか、実は嘉助の方が相性は良さそうだけどね(笑)
ねねとの価値観が相違した、とも
ではさぞ、信長様の覚えも目出度いことであろうな。どのような恩賞をくだされるか。ねねさはよい亭主殿を持って幸せじゃのおう(笑)また出世は疑いなしじゃ(とも)
ねねは秀吉の出世を望んでいたわけでない。兎に角、子が欲しかった
秀吉が出世することによる災いを想像できなかった、とも
長山藍子さんが上手過ぎる!
第六回「一夜城主」における、ともに扮した長山藍子さん。もう、絶品過ぎましたね。兎に角、上手い。
登場シーンの冒頭では、何処となく、ぼんやり感が目立っていた長山藍子さん。もしかしたら、当日は寝不足とか、何かしらの不安因子があったのかもしれない。その点は、よくわからない。
でも、女優としてのキャリア十分、さらには橋田壽賀子脚本にも慣れている。そりゃ、どんな状態であっても、しっかりと仕上げてきますよね。
兎に角、長山藍子さんのパフォーマンスって。
だから、こうした記事で解説もしやすいわけ。
逆に、下手の人だと、訳が分からないから、解説のしようもない。
第六回のともは、台詞回しのテンポがよい。それは音量の強弱で抑揚のアクセントをつけてみたり。かと思えば、棒読みで流しつつ、語尾にアクセントをつけてみたり。それに加えて、目の色の強弱とか、緩急の面相表現も卓越した技術力。もちろん、長台詞の暗記力や忘却回避能力といった橋田寿賀子脚本に求められる基礎体力も備わっているわけですから。
第六回を視聴しただけでも、長山藍子さんの所以がひしひしと伝わってきましたね。
今後の、ともがますます楽しみになってきました。
第六回、ともに記すツイート
きい。わしゃな、わしゃ、一番乗りしたんじゃぞ!のう、小一郎殿!弥助さは、腰抜かされてのう(嘉助)
一族の前で、夫の弥助を侮辱されて。瞬く間に、移り気の面相で表現された嘉助への怨念。演者は、長山藍子さん。
画像:NHK大河ドラマ『#おんな太閤記』第六回「一夜城主」#ともに記す pic.twitter.com/Cn0MG49YCC
— 渡る世間の片隅で (@watasumi_net) May 14, 2022
ねねさはええのう、姑の苦労ものうて(とも)
朝から晩まで舅や姑に怒鳴られながら畑仕事をしていた、とも。小姑の面倒くさい一面を惜しげもなく義妹に魅せつけた羨みの吐露。演者は長山藍子さん、そして佐久間良子さん。
画像:NHK大河ドラマ『#おんな太閤記』第六回「一夜城主」#ともに記す pic.twitter.com/nwVLo3397Q
— 渡る世間の片隅で (@watasumi_net) May 14, 2022
長山藍子さん、やばいね(笑)
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